第2話 バケモノッッッッッ!!!!! 20 ―バケモノッッッッッ!!!!!―

 20


 ………


 …………。


 セイギと勇気が再会したのは、それからすぐの事だった。


 ポツポツと雨が降り出し、雨粒の大きさがこれからの大降りを予見させた時、勇気はセイギの前に現れた。


「勇気!!」


 ボッズーと別れたあの場所では踵にも至らない程の長さだった野草が、膝を隠すまで伸びたこの場所。木々の間隔も、隠れるには丁度良く密集していた。


「へへっ……ビックリしたぜ。バケモノの野郎が現れたのかと思ったぜ」


 ガサガサ……と草木が擦れる音が聞こえ、その場所に視線を向けると、勇気はそこにいた。


 セイギは咄嗟に構えた大剣をゆっくりと降ろし、木の陰から現れた勇気に向かって歩いていく。


「心配したぜ……全然連絡取れねぇから、もしかしてって思っちまったぜ」


 勇気はセイギが話し掛けても、しがみ付く様に片手を木に添えて、ただセイギを見ているだけ。厚い雨雲と、木に繁る葉によって、勇気の顔には光が当たらず、その表情は全く見えない。


「なぁ、何があったんだ? 俺に詳しく教えてくれよ」


 だけど、セイギはいつもと同じ様に勇気に話し掛けた。だってセイギは、勇気が"いつもの勇気"と信じて疑わなかったから……


「おい、何か言えって!」


 セイギは仮面の奥で笑顔を浮かべながら、勇気の肩に手を置いた。



「………!!」



 でも、そうじゃなかった……


 勇気の顔を見たセイギは思わず言葉を失った。セイギの瞳に映った勇気の顔は、とても虚ろで、その瞳には一切の光が無かったんだ……


「勇気……おい! 勇気、どうしたんだよ!!」


 セイギは片手で持っていた大剣を取り落とした。


 そして、両手で勇気の肩を掴み、強く揺さぶる。


 この時までセイギは、勇気は自分を見ていると思っていた。でも、そうじゃなかった。勇気はセイギを見てはいなかった。ただ光を失った瞳で虚空を見ているだけ。いや、視線をそこに置いているだけだ……



「……さないで……こ……さないで……」



「え?」


 勇気が何かを呟いた。


「何? なんて?」


 セイギは勇気の口元に耳を寄せた。


「ころさないで……ころさないで……」


「え……?」


 セイギはその言葉に耳を疑った。


「殺さないで……? 何言ってんだ、そんな事する訳無いだろ? 俺だよ、勇気、誰だと思ってんだ……俺だ! 正義だよ!!」


 セイギがもう一度勇気の肩を揺すろうとした時、


「撃つなぁぁぁ!!!!」


 勇気のこの世の終わりを見たかの様な叫喚さけびが……セイギの鼓膜を揺さぶった。


「なっ!! ゆ……勇気、撃つなって、何………うわっ!!」


 勇気はセイギの手を振り払い、突然駆け出した。


「撃たないで! 撃たないで!! 嫌だよ!!」


「何言って………勇気、待て!!」


 セイギは落とした大剣を拾い上げ、勇気を追い掛けた。


「待て!! 待てよ勇気!! どうしちまったんだよ!!!」


「嫌だ!! 嫌だよ!! 撃たないで!! やめて……殺さないで!!!!」


「待てよ、勇気! 行くな!! 勇気ぃぃぃ!!!」



「バンッ!!!」



「えっ……?!」



 突然……



 勇気でもない、勿論自分でもない、何者かの声が聞こえたかと思うと、セイギの体は強い衝撃を受けて真横に吹き飛んだ。


「グワァアッ!!!!」


 衝撃に体を吹き飛ばされながらもセイギは、自分を襲った衝撃が火球の様なものだった事、その火球は自分の体にぶつかると弾ける様に爆発した事、そして、その火球の向こうに"真っ白な体をした、銃を構える異形の者"が存在していた事……その全てを取り逃さなかった。


「………ッ!!!」


 木にぶつかったセイギは再び大剣を取り落としそうになった。だが、今回はそんな事を自分には許さない。咄嗟に大剣を握り直すと、すぐにセイギは立ち上がった。


「誰だ!!!」


 攻撃を喰らった右肩がビリビリと痛む。


 ― こんなもん昨日の痛みに比べたら屁みたいなもんだぜ……


 奴はまだそこにいた。セイギから目測3m、さっきと同じ場所だ。木と木に挟まれる形で、片手を上げて銃をこちらに向けている。

 さっきの勇気と同じで、光が当たらず姿形はハッキリとは見えない。攻撃を受けた時は火球が放つ光が敵の姿を照らしていたのだろう、その時は真っ白な体をしているのが分かったが、今は灰色、淀んだ灰色に見える。


 そいつに向かってセイギは大剣を構えた。


「やっと会えたな……バケモノッッッッッ!!!!!」



第二章、第2話「バケモノッッッッッ!!!!!」 完


―――――


第二章、第2話「バケモノッッッッッ!!!!!」をお読み頂き誠にありがとうございます。

これよりガキセイギとバケモノの対決が遂に始まります……が、次回をお楽しみにで御座います!

次回、第3話『慟哭』では、勇気に何が起こったのかも明かされますので、ご期待下さい!


「ガキ英雄譚ッッッッッ!!!!! こりゃ面白い!」……と思って頂けたのであれば、応援、感想、☆を頂けると嬉しいです!

レビューを頂けたら更に励みになります!

それでは、次回も宜しくお願い致します!!!!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る