第2話 バケモノッッッッッ!!!!! 17 ―ボッズーからの通信―

 17


「セイギ!!!」


 ……ボッズーの声だ。セイギがボッズーを呼ぶ前に、ボッズーの方から通信が届いた。

 その声は荒れている。どうやら、嬉しい知らせを届けてはくれなさそう。


「セイギ! セイギ!! 大変なんだボズ!!」


「た……大変? どうしたボッズー! 何かあったか!!」


「何かもなにも! なんか気持ち悪いんだボッズー!!」


「き、気持ち悪い??」


 腕時計の文字盤から浮かび出たボッズーの顔は、大分焦っている様子。だからか、言葉が端的過ぎて、セイギには意味が分からなかった。


「そうなんだ、そうなんだよボッズー!! ミルミルミルネで見てたら、おかしな物を見付けたんだボズ!」


「おかしな物? 何だよそれ?!」


「おかしな物はおかしな物だよ! だから来てみたんだけど、やっぱり服だけ! 服だけあって、人が居ないんだボズ!!」


「ふ、服だけ? お……おい何言ってんだ?! 意味分かんねぇよ、ちゃんと話せ! つか、今お前何処に居んだよ? 場所を教えてくれ!」


「場所……あぁ、そっか!」


 今のボッズーの頭の中を開いて見てみたら、きっとハチャメチャな状態になっているのだろう。しかし、そんなハチャメチャにする何かをボッズーは見付けたんだ。その事を考えるとセイギも焦ってきた。自然と貧乏ゆすりの様に足が動き出す。


「……えっーとね、どうしよう。見付けたらすぐに降りてきちゃったボズからな……地上からで考えると、えーっと……」


 空で見付けたその場所を地上にいるセイギに説明するのは、今のボッズーには凄く難しい事になっているみたいだ。


「なんだよ……」


 セイギはこの"事を進めさせないやり取り"が歯痒く感じた。だから言葉も荒くなる。


「だから……『何か見付けたらすぐに連絡しろ!』って言ったろ!」


 ……だが、ボッズーに言葉をぶつけてみて思い出した。自分も勇気の母を見付けた瞬間に無我夢中で走り出していた事を。


「あっ! あぁ……そっか、俺も一緒だ……」


「ん? 何ぃボズ?」


「え? あ……いやいや、詳しくは後で説明するよ。それより、怒鳴ってごめん。なぁボッズー、何か近くに目印とかは無いのか?」


「目印ぃ? う~む……分からんボズ! どこも木ばっかだよ!」


 困った顔をしたボッズーの顔のビジョンが、文字盤の上でキョロキョロと動いた。


「町の中じゃないから目印って言われてもボズ……」


 確かにその通りだ。でも、


「あぁ~~ちょっと待って! 目印! 目印ぃ……あぁ! あったかも!! そうだよな?間違ってないよな? うん! うん! うん!」


 ボッズーは何やら自問自答をしたかと思うと自分一人で納得した。


「セイギ、戻ってこい! さっきの道! 戻ってこいボッズー!!」


「戻ってこい? ど、どういう……」


「良いから来いってボッズー! さっきパトカーの近くでカラーコーン見たろ? アレと同じのが俺の目に映ってるんだ!」


「じゃあ、あそこの近くって事か?」


「うん! 多分、一個だけ転げ落ちたんだボッズー!」


「転げ……落ちた? まぁ良いや、兎に角さっきの場所に戻れば良いんだな?」


「そうだボッズー! 早くしろ!!」


 そう言い残すとボッズーは一方的に通信を切ってしまった。


「お……おいって! はぁ、何が何だか結局分かんなかったな……」


 そうボヤキながらセイギは再び勇気の母の顔を覗き込んだ。


「おばちゃん、ごめん。ちょっと待っててね。病院にはすぐに連れてくからね」


 勇気の母の眠る顔にそう呟くと、セイギは林道に投げた大剣を再び手にして、パトカーを見付けた場所まで急いだ。

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