第3話 空が割れた日 24 ―いいこと思い付いた!!―

24


「ボッズー、まだまだ飛べるか?」


 今また光弾を避けたガキセイギがボッズーに問い掛けた。


「あぁ、勿論だボッズー!! そっちだって大丈夫か? 集中切らすなよ!! ほら、クルンっしろボッズー!!」


「クルン? ……あぁ、なるほど! ドリャッ!!」


 ボッズーの合図でガキセイギはバク宙の様に体を回転させ上昇した。

 後方から光弾が飛んできたんだ。

 そして、その光弾を避けながら、セイギはボッズーへの質問を続けた。


「ボッズー、もう一個聞きたい! このスーツって宇宙とか行けんのか?」


「ふぇ? 宇宙? こんな時に何を聞くんだボッズー! そんなの無理に決まってんだろボッズー! 息が止まって死んじまうよ!」


「そっか、やっぱ無理か! ………うわッ!!」


 しかし、上昇したところで罠が仕掛けられていた。光体はガキセイギがどうやって光弾を避けるのか予測していたのか、上昇したらもう一発の光弾が出会い頭のトラックが如く突っ込んできたのだ。


「あっぶねぇ! 当たるとこだったぁ!」


「もう! ムカつくぅ!! 避けても、避けても続くボズ!! 埒が明かないボッズー!! どうしたら良いんだボズぅ!!」


 何とか咄嗟に体を翻して出会い頭の光弾は避けられたが、ボッズーの口からは弱音が出る。

 やはり多勢に無勢なのだろうか。しかも、光体はガキセイギ達が上昇しても下降しても、同じ高さに追い掛けてきては光弾を撃ってくる。しかも、しかも、籠の中の鳥で光体にぐるりと囲まれているから、360°どこから光弾が飛んでくるのか分からない。

 更に厄介なのが、ガキセイギがどうにかこうにか光体に近付こうとしても、奴等は先にも例えた通り、砂鉄の様に動いてガキセイギと距離を取ろうと移動するのだ。

 光体は必ず一定の距離を保ち続ける。近付けなければ攻撃も出来ない。攻撃が出来ないなら敵の数を減らす事も出来ない……


「宇宙は無理だったかぁ……じゃあ他に何があるかなぁ」


「はぁあ? 何言ってんだボズ!! 現実逃避すんな!! 集中しろって言ってるだろボッズー!!」


「いや、現実逃避じゃないって……あ、ボッズー潜ろう!!」


「ぺゅぅ!! じゃあ、何なんだよボッズー!!」


 彼らは再び空を潜って、光弾を避けた。


「いや、アイツらしつこくついてくるからさ、宇宙に連れてって正に息の根を止められれば一気に一網打尽に出来るかなぁ? って思ったんだよ……あ、海って手もあるな!! う~ん……でもアイツら呼吸してるかどうかは分かんねぇからなぁ~、やっぱダメかぁ……」


 ガキセイギは軽口を叩いている訳ではない。考えているんだ、逆転の一手を。


「んな事言ってる場合か! またアイツら追っ掛けてきてるよボッズー! あんにゃろめぇ~~」


 鼻息荒くボッズーは吠える。

 二人は光弾を潜って避けたが、そんなセイギ達を光体がまた高度を下げて追い掛けてきたのだ。


「む~ん……あのさ、ちょっと気になるんだけど。アイツら自分で考えて動いてるのかなぁ?」


「え?! なんだボズぅ?」


「いや、アイツら俺達とずっっっっっと一定の距離を保ってるだろ? しかも距離だけじゃなくて高度もさぁ。俺達が上がったら上がって、下がったら下がって……って、なんか自分の意思ってより、そう設定されたからそう動いてるって感じしないか?」


「うぇ?」


「なんつーの? ほら、えっとーーー! ほら、アレだよ、アレ! アレみたい!」


「どれだボズぅ!!」


 一ミリのズレも無かった二人の考えも、光体の止まぬ攻撃でズレてしまったのか、ボッズーは『この男は何をさっきからブツブツ言っているのか……』と、段々とイライラし始めていた。ガキセイギの話の意味が分からなかったんだ。


「いやいや、まぁ良いや! なんでも! 兎に角、アイツらは生物じゃねぇ! アレだ! ロボットだ!」


 ガキセイギは勝手に結論を出すと、ボッズーにある事を命じた。


「ボッズー! 急上昇だ! 宇宙に向かって飛べッ!!」


「はぁ? だから、宇宙は無理だって!」


「違う、違う、そうするつもりで飛べって事! ヨシッ! 行くぞ!!」


 そう言ってガキセイギはボッズーからの了承の言葉も聞かずに空中を蹴り、ジャンプする様に飛び上がった。


「もう! 意味が分からないボッズー!!」


 ボッズーも『やれやれ……』という表情をしながら、ガキセイギに合わせジェット噴射の如く翼から空気を噴き出し加速した。

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