第3話 空が割れた日 23 ―やっぱ多勢に無勢なのか?―
23
しかし……
ガキセイギの闘志とは裏腹に、光体の群れはガキセイギが飛んでくると、紅の穴の前から隊列を崩して大空の中に散らばっていった。
「あ……おい! 逃げんなって!!」
ガキセイギは光体に向かって怒鳴った。そりゃそうだ、ガキセイギの闘志は燃え滾っているのだから。『今ここで全ての敵をぶっ倒して、一人の怪我人も出さずに、この世界の平和を守ってやる!!』……と勢い込んで光体に向かって行ったのだから。
しかし、新たに現れた光体は、さっきまでの光体とは違ってセイギと真っ正面から戦おうとはしてくれず、砂鉄に同極の磁石を近付けたみたいに、セイギから距離を取った。
だがそれは、光体がセイギを恐れて逃げた訳ではない。何故なら、セイギから距離を取ると、光体の群れは左右に散って、あっという間にセイギを"籠の中の鳥"に追い詰めたからだ。
「うわっ……クッソ!! 囲まれた!!」
「むむぅ……卑怯だぞボッズー!!」
罠だったのだろう。猪突猛進に突っ込んだガキセイギよりも、光体の方が賢かったのだ。
更に、準備も万全だ。光体は左右に散らばりセイギを囲みながら、その時点で既に攻撃の準備を始めていた。
そして、ガキセイギを籠の中に閉じ込めると、光体の群れは攻撃を開始した。
ドォーーンッ!!!
まずは最小の動きでガキセイギから距離を取り一番最初に攻撃準備を整えた数体から。
「うわっと!!」
ガキセイギとボッズーはすぐにそいつを回避する。
「あっぶねボッズぅぅ!!」
しかし、敵の数は多い。光体の攻撃準備は続々と整い、続々と光弾が発射される。
ドドドドドドドドド………ッ!!!
それはもう単発じゃない。撃たれる方からしてみれば、連発と同じだ。
「うわっ……クソォッ!」
ガキセイギとボッズーは……
「ヤベェッ!!」
自慢の翼で……
「右ぃッ!!!」
縦横無尽に飛び回り……
「今度は左だッ!!!!」
光弾を避け続けた。
しかし、しかし、避けても避けても光体の攻撃は止まなかった。セイギはさっきの戦いの様に敵の隙をつく事が出来ない……
それもそうだろう。敵の数が圧倒的過ぎたんだ。今度の光体も攻撃を発射するとその後に数十秒間の隙を生むのは先に現れた光体と同じだった。だが、今度のは100体もいるんだ。其々の光体に隙が生まれても、全体で言えば隙は無いに等しかった。
例えば、ここにA、B、Cの光体がいるとして。さっきまでの戦いでは、Aが光弾を発射する、それをセイギが避ける、ここで生まれた隙にセイギが斬撃をくらわせる……これが出来ていたのだが、今回の戦いは、Aが攻撃をする、セイギが避ける、Bが攻撃する、セイギが避ける、Cが攻撃する、セイギが避ける、ここでAの攻撃準備が整いセイギに攻撃する、それをセイギが避ける、Bの攻撃準備が整い………こんな連鎖が続いていたんだ。
「もぉぉぉーーーー! これじゃキリがないボッズー!!」
光体の止まぬ攻撃は数分間と続いた………
「こんにゃろー!!! こっちにもターンを渡せよボッズー!! ヤル気満々なんだよこっちわぁ!!」
ボッズーは叫んだ。
彼は思っていた。『まるで悪夢の中にいるみたいだ』……と。
だがしかし、相棒のガキセイギの表情は焦り始めたボッズーとは反対に逆に冷静な表情へ変わっていっていた。
その顔は仮面の中に隠されているし、ボッズーは彼の背後にいるからその表情に気付く事はなかったのだが、実は彼は『今の状況は不幸中の幸いでもある』と考えていたのだ。
それは何故か、セイギを狙い続ける光体はセイギを相手にする事に夢中になってしまっているのか、町への破壊行為を始めようとしなかったからだ。
ー 悔しいが、囮にはなれている……でも、それだけじゃダメだな、有言実行……絶対、有言実行でやってやる
セイギは光体の群れに突進する前に言っていた。『光体が町に手を出す前に絶対にぶっ倒す!』と。だが、町への攻撃は阻止出来てはいるが、今はセイギから攻撃を仕掛ける事は出来ていない……
ー 段々ボッズーの羽ばたきにもキレが無くなってきてる……『不幸中の幸い』もそう長くは続けられないだろうな。それに、やっぱ攻撃が最大の防御だ。町を守る為には、何か逆転のチャンスを作らないと!!
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