八話

「蹴ったり、爪で引っかいたりしてみたけど、まったく削れないし、傷すら付かないんだ。これは普通の壁じゃないよ」


 リズが灰色の壁に触れてまじまじと観察している後ろでモリッツがそう言った。その通りで、見た目は真っ平らな石壁にしか見えないのに、触れても石の感触はなく、爪を立てても何の跡も残らない。ただの壁とは言い難いだろう。そこでリズはこう予想した。


「この部屋は石で作られた部屋じゃないのかもしれない。フレインが魔術で作り出したものなのかも」


「そんなことが出来るの?」


「空間魔術って言って、熟練した魔術師は空間を伸ばしたり縮めたりすることで、時間の速さを遅くしたり、人や物を瞬間的に移動させることができるの。中には異空間に住み着いて、趣味に没頭してる魔術師もいるって話。この部屋は石に似せた壁だけどまったく違う。多分、魔術で作り出した空間なんだと思う」


「つまり、どういうことなんだ? ここは異空間にある部屋っていうことなの?」


「そうかもしれないし、ただどこかに魔術で仕切って作られただけかもしれないし、それは出てみるまでわかんない。少なくとも素手でこの壁を破ることは不可能なのは確かよ。フレインが魔術を解くか、その命を落とすかしない限りはね」


 腕を組んだモリッツは難しい顔で頷く。


「なるほど……それで、リズはどんな魔術で壁を破るつもり?」


「それなんだけど……」


 途端にリズは困惑顔になる。


「この壁、わかりやすく言えば、どこにも隙がなくて、私が使える魔術じゃ対抗出来そうにないの」


「でも、傷くらいは付けられるんじゃないか? それを繰り返せば――」


「きっと駄目。私でも見ればわかるくらいなんだから」


「最初から諦めないでくれよ。やってみないとわからないじゃないか。一度試してみてよ」


 モリッツに強く促されたリズは、結果は見えているものの、渋々返事をした。


「……じゃあ、一回だけだよ」


 短い呪文を唱えて現れた発光体をわしづかむと、リズはそれを壁に向けて叩き付けるように投げた。瞬間、バチバチッと電気が走るような音が鳴り、発光体は壁に弾かれて二人のほうへ跳ね返ってきた。


「ひゃっ!」


「うわっ!」


 咄嗟に避けた二人の間を過ぎ、発光体は向かいの壁にぶつかったところでかき消えた。


「……あ、壁は――」


 モリッツは発光体をぶつけた箇所に顔を近付けた。だが灰色の壁にはわずかな傷もなかった。指先で触れてもみるが、削れた感触は伝わってこない。何も変化はなかった。


「やっぱり駄目だったでしょ? わかるの。この壁からフレインの魔力の高さが」


「そんな……他に方法はないの? 爆弾みたいな威力のある方法は……」


「あるのかもしれないけど、私、見習いだから……ごめんなさい」


 モリッツはうなだれ、肩を落とす。


「そうか。やっと希望が見えたと思ったんだけどな……」


「私にこの壁は壊せなかったけど、でも、脱出の方法がまったくなくなったわけじゃない」


 希望を含んだ言葉に、モリッツは顔を上げ、リズを見た。


「壊す以外に、何か方法があるの?」


「こっち側からは何も出来なくても、向こう側から何かしてくれれば、付け入る隙はあるかも」


「向こう側って、犯人の女のことか?」


「フレインでもいいけど、正直、直接来られても逃げ出せる自信がないな……。それより、もう少し扱いやすそうで、ここに来る人がいるでしょ?」


 モリッツはすぐに思い付いた。


「……あの、陰気な男?」


「そう。殴られても抵抗しないっていうのは、きっとフレインにそう言われてるからだと思う。実際会ってみないとわかんないけど、私の魔術が効いてくれるかも。その男が出入りする瞬間、壁がなくなるわけだから、そこを狙えば脱出も出来るはず」


「素手では無理だったけど、魔術で抵抗すれば、いくら怪力の持ち主でも怯むかもしれないな」


 だがリズの表情は冴えない。


「でも問題は、その男が私達を連れて行く時にしか現れないってことよ。もししくじれば、どちらか一人……向こうの都合次第じゃ二人とも連れて行かれることだってあり得そう。いつ現れるかもわかんないし、うかうか休んでも――」


「それは大丈夫だよ」


 モリッツは明るい声で言った。


「言い忘れてたけど、あの男はそれ以外に、僕達の食料を持ってくる時も現れるんだ」


「食料? そんな気遣いをしてくれるの?」


「してくれないと困るよ。ここにいると時間の感覚がなくなるけど、多分何日も経ってるはずだ。飲まず食わずじゃとっくに飢え死にしてたと思う」


 確かにモリッツに痩せたところはなく、顔色も悪くない。見た目は至って健康的だ。フレインは誘拐した者達を無意味に殺したりはせず、食事を与えて生かしている。そこにはやはり何かの目的のために行っている思惑が感じられる。


「次はいつ持って来るかわかる?」


「何となくはね。僕の腹時計だと、もうすぐ来る予定だ。一人になってからは腹が空くと、それを知ったかのように現れるんだよ。あの男も魔術師で、僕の心を読んでたりして」


「そんな面倒な相手じゃなきゃいいんだけど……それじゃ、現れるまで作戦会議ね」


 二人は壁際に並んで座ると、男が現れた際の対応、行動、判断など、細かく話し合い、作戦を練った。万が一男の抵抗に遭っても、出入り口の確保をまず優先し、そのためにリズが魔術で牽制、その間にモリッツが出入り口の確保、そして脱出という基本的な動きを確認し、二人はその時を静かに待った。


 そして腹時計の予定通り、男はおもむろに現れた。


 自分の指先を見つめながらぼーっと待っていたリズは、気配と物音にすぐさま顔を上げた。


「……来た」


 モリッツが緊張した面持ちで呟いた。向かいの壁には人一人が通れる穴がぽっかりと開き、そこから小柄な男が盆に載った料理を手に出て来た。二人を三白眼でいちべつすると黙ったまま近付き、目の前の床にそっと料理を置く。そうして男は再び二人に目を向けると、さっさと食べろとでも言うように睨む目付きで見下ろしてくる。まるで食べるまで見張っているぞと威圧してくる雰囲気だった。その背後にはまだぽっかりと開いたままの暗い出入り口が見えている。


 リズは初めて見る男の様子をうかがいつつ、作戦通りの行動を始めた。


「モリッツ、先に料理を取って」


 盆をモリッツの前へずらし、料理を取るよう促した。


「あ、ありがとう」


 ぎこちない笑みを見せながら、モリッツは自分の分の皿を盆から取る。そして最後に水の入ったコップを手に取ろうとした瞬間――


「あっ……」


 指先が誤ってコップにぶつかり、床に水がこぼれて広がった。


「わっ……大丈夫?」


 濡れないよう立ち上がったリズと共にモリッツも立ち上がる。


「ご、ごめん。……あの、何か拭く物とかありませんか?」


 聞かれた男は何も答えず、しばらく黙り込んでいたが、おもむろに自分の着ているシャツの裾をつかむと、その一部分をビリビリと破り始めた。そうして破り取られた布を男はモリッツに差し出した。意外な行動に唖然とするモリッツだったが、しかし差し出された布を受け取ろうとはしなかった。それを男は不思議そうに、苛立ったように見つめる。そして――


「モリッツ!」


 リズの声にモリッツは男の前から離れた。その直後、男の背後で光が弾け、その衝撃で男の小柄な体が部屋の隅へ吹き飛ばされた。


「やった! 上手くいった!」


 男の意識がモリッツに向いた隙に背後へ回り込んだリズが、魔術で男を撃退するというのが考えた作戦で、それはいとも簡単に成功してしまった。先ほどまでの緊張が喜びに変わり、モリッツは腕を振り上げて笑みをこぼす。だがリズはまだ緊張を保っていた。


「喜ぶのは出られたらにして」


 吹き飛んだ男には構わず、リズは出入り口の穴に駆け寄った。


「……これは、異空間の通路だ」


 かすかな空気の流れのある穴は、どこを見回しても闇しかなく、何も見えない。


「そんなところに入っても大丈夫なの? 何か怖いな……」


 横からのぞき込んだモリッツは不安そうに言った。


「何も怖いことはないわ。流れに身を任せれば勝手にどこかへ着くから。まあ、そのどこかがわからないのはちょっと怖いけど。……さあ、入って」


 リズはモリッツの肩を押した。


「僕から入るの? 君も一緒に――」


「一人ずつしか入れないんだから。ほら、ぐずぐずしてないで早く。じゃないと男が――」


 そう言って男に目を向けると、倒れていたはずの男は身を起こし、二人のほうを見据えていた。


「あ、あいつ、もう目を覚ましたのか!」


 振り向いたモリッツも気付き、再び顔に緊張が滲んだ。


「行って! 早く!」


「わかった……!」


 モリッツが暗い穴をくぐろうとした時だった。男は鬼の形相になって二人の元へ突進し始めた。ここでリズが逃げればモリッツが捕まってしまうだろう。震えそうに怖くても、対抗できるのは自分の魔術しかないのだ。彼を助けるためには突進する男を迎え撃つしかなかった。


「やらなきゃ、駄目……!」


 リズは怯えそうな自分を叱咤し、呪文を唱える。だが男は手を伸ばし、リズにつかみかかった。


「うっ――」


 乱暴に襟首をつかまれ、リズはそのまま床に押し倒されてしまった。


「リズ!」


 一度は穴に入ったモリッツだったが、背後の様子に気付くと腕を伸ばし、リズのローブをつかんで引き寄せようと試みる。だがそれを押さえ付ける男の力と重さでなかなか動かない。


「くそっ……その手を放せ!」


 抵抗するリズに馬乗りになった姿勢の男に、モリッツは思い切り蹴りを繰り出した。そのつま先は男の顔面をとらえ、ガツンと弾いた。そのおかげで襟首をつかむ手が緩み、リズは男を押し退けてモリッツにローブを引っ張ってもらう。


「ありがとう……今度こそ!」


 立ち上がったリズは穴の前で仁王立ちになると、男を足留めするため再び呪文を唱える。


「リズ、何か、やつの様子が変だ」


 モリッツの慎重な声に呪文を唱えながら見てみれば、男は尻を付いた状態から立ち上がろうとしているところで、しかしその身は小刻みに震え、足は時折よろめきそうになっている。顔に入った蹴りが効いたにしては、想定以上に弱っているようにも見える。だが二人にとっては好都合と言えた。


 詠唱を終え、発光体を手にしたリズは、男をさらに突き放すべく投げる構えを取った。だがそこで見た男の顔に、思わず動きが止まった。


 顔を上げて二人を見る男――そこには牙をむき出した大きな口、上向いて潰れたような鼻、鮮血を思わせる赤々とした目、そして、額の皮膚を今まさに突き破り、生えてきた二本の短い角。どこを見てもそこには人間と言える箇所はなく、先ほどまでの陰気な男は異形の者へと変貌を遂げていた。


「か、怪物……!」


 モリッツは息を呑み、怯える声で言った。だがリズは怖がることなく、一人納得していた。


「あなた、フレインの使い魔だったんだね」


 そう言われた男は大きな口を歪ませ、リズを見た。


「オレをねじ伏せられる人間は、殺していいと言われてる」


 怪力なのも、攻撃に怯まなかったというのも、単に彼が人間ではなく、人間以上の身体能力を持った生き物だったからなのだ。しかし所詮は魔術で呼び出された使い魔。それに抗えなかった時点で魔術師には勝てない運命なのかもしれない。だがリズはまだ見習いの身だ。魔術では優位でも、油断をすれば先ほどのように追い詰められることもある。使い魔だからと安心して手を抜くことは出来ない。


「お前は、殺す!」


 男はリズ目がけて突っ込んで来る。


「もうつかませないから!」


 手にある発光体をリズは勢いよく投げた。それを見て男は急停止し、両腕で顔を防ぐ姿勢を取る。そこに発光体はバンッと激しい音と光を散らせて衝突した。その衝撃で男の体は反対側の壁まで吹き飛ぶも、一度目のように倒れ込むことはかろうじてなかった。


 それを横目にリズは立ち尽くしていたモリッツを強く押し、穴の奥へ行かせた。


「んな! わああ……」


 小さな驚きの悲鳴を上げながらモリッツは闇の中へ消える。その後を追うようにリズもすぐさま穴の奥へ飛び込んだ。


 全身をねじられ、浮遊しているような感覚を味わうこと数秒、モリッツは未体験の恐怖に目を閉じていたが、体が放り出される感覚と、手と足が地面に触れた感触で恐る恐る目を開けた。


「……ここ、どこだ?」


 周囲を見回しながらへたり込むモリッツは、見覚えのない薄暗い部屋に眉根を寄せた。


「ちょっと、どいて!」


 声に振り向くと、壁のある方向からリズが突然現れ、モリッツの背中にのしかかってきた。不意のことに避けられず、モリッツは床に倒された。


「リズ、い、痛い……」


 腕と肩を打ち付けてしまい、モリッツはうめく。


「こんなとこにいたらぶつかっちゃうのは当然でしょ。あ、そんなことより……」


 リズはすぐに立ち上がると、自分が来た壁のほうへ向かった。


「モリッツも手伝って」


 言われ、打った腕をさすりながら立ち上がり、視線を向けると、その壁一面には大きな円に直線や幾何学模様、小さな文字がちりばめられた謎の絵が描かれていた。リズはそれを手でこすり、急いで消そうとしていた。


「これは、何なの?」


「魔術師が描く魔法陣。さっき入った穴の出入り口がこれ」


「出入り口? じゃあ僕達は、ここから出て来たのか?」


「そういうこと。……消えないな。特別な染料が使われてるのかな」


 魔法陣は青紫のインクで描かれていたが、いくら強くこすってみてもわずかに薄くなるだけで消えてくれなかった。


「それなら……モリッツ、どこかに色の付いた液体はない? ぶどう酒みたいに濃い色の」


「え? そんなもの、どうするの?」


「説明してる暇なんてないの。ああもう、自分で探す!」


 状況を理解していないモリッツを置いて、リズは部屋の中を駆け足で見て回る。と、書机の上にインク瓶を見つけ、それをつかむと、リズは蓋を開けて中を確認し、壁の前に戻った。そして中身の黒いインクを魔法陣へためらいなくぶちまけた。ビシャッと音を立てたインクは綺麗に描かれていた模様や文字の一部を黒く染め、流れ落ちるインクがさらに汚していく。それをリズは満足げに眺める。


「ひとまずこれで大丈夫なはず」


「一体、何をしたの?」


 意味のわからない行動にモリッツは聞いた。


「足留めよ。こうして魔法陣を汚せば力が発揮出来なくなって、出入り口も開かなくなるの。出来れば魔法陣を消して、異空間の通路ごと消せればよかったんだけどね。でもどっちにしろ、あの男はここに出られなくなったから」


「そ、そうなんだ。僕にはよくわからないけど、あいつが追って来ないなら安心だよ」


 これにリズは真剣な表情を向けた。


「まだ安心じゃない。これはフレインが描いた魔法陣のはず。ってことは、ここはフレインの領域内……安心するのは早いよ」


「そうだった。僕達を誘拐した犯人がまだどこかにいるんだ……見つかる前に逃げよう」


 そわそわし始めるモリッツに、リズは首を横に振る。


「私はまだ逃げられない。モリッツは一人で逃げて」


「何で。こんなところにいたら、また――」


「わかってる。でも、私はまだ捜さなきゃいけない人がいるの。だから先に逃げて」


「危険すぎるよ。一度逃げたほうがいい。それからでもいいじゃないか」


「フレインの領域に入り込めた、この好機を捨てたくないの。私のことは心配しなくていいから、モリッツは行って」


 意志の強さを感じるリズの言葉に、モリッツは説得は無理だと察し、それ以上は言えなかった。


「……そこまで覚悟があるなら、僕は行くけど……」


「うん。気を付けてね。それと、ありがとう」


 笑顔のリズをモリッツは複雑な顔で見つめる。


「こちらこそ……犯人と鉢合わせする前に逃げるんだぞ」


 そう言い、モリッツは部屋の入り口へ向かうと、周囲を確認しながら小走りで去って行った。その気配が遠ざかると、リズは改めて部屋を見回す。


「ここがフレインの住み処なら、お父さんの魂もあるかもしれない……」


 フレインの力も、その危険さも承知だが、父の魂の行方がわからない今、この場所には大きな可能性があるのだ。魂は肉体から長く離れ過ぎるとその命を弱らせ、最後には死んでしまう。そんな結果にさせないためにも、リズはどんなに危ない行動だろうと、父の魂を探さなければならない。フレインの住み処ならなおのことだ。それが今自分のすべきこと――再び捕まる恐怖を強く持った心で追いやり、リズは建物内の探索を始めた。


 その頃、まだ夜の明けない道端で、リッツォは吹いてきた風の寒さに目を覚ました。


「……さむ……あれ? 火事は……」


 ぼやけた頭で立ち上がり、辺りを見る。だが周囲には草むらしかなく、赤い炎も焼け焦げた臭いもない。リッツォは記憶をたどり、自分に起きたことを思い出そうとした。


「女が俺に、確か魔術をかけてきて……眩しい光が……」


 直前の光景までは思い出せたものの、それで自分の身に何が起こったのかまではよくわからない。だが周囲を見る限り、バンベルガーの家のある森とはまた違う場所にいるようで、おそらく自分は魔術で飛ばされたのだろうという推測はすぐに出来た。


「ここ、どこだ……?」


 突っ立っていても寒いだけで、リッツォはとりあえず道なりに進んでみることにした。暗く細い道を歩いて行くと、頭上の枝葉が消え、星の瞬く夜空が現れた。森はここで終わるが、道はまだ先へ続いている。さらに進んで行くと、やがて前方に灯りが見えてきた。点々とあるのは、どうやら民家の灯りのようで、近付くと屋根や煙突の形も見えてきた。


「村、か?」


 静まり返った村の中へリッツォは入った。窓越しに灯りが見える家もあるが、ほとんどは真っ暗だ。もう寝ているのだろう。出歩く人もおらず、ここがどこなのかわからないまま、当てもなく歩き続けるリッツォだったが、村の奥まで来た時、ふと見た景色に何か閃くものを感じ、足を止めた。


「……あの家、見たことあるような……」


 木造の、赤茶けた屋根に鉢植えの置かれた四角い窓――どこにでもある民家の景観ではあるが、それはリッツォにとって唯一知ると言ってもいい景色だった。


「この村、まさか……」


 はっきりと確信したリッツォは、一軒の家へ向かい走り出した。するとその窓から弱い光が漏れているのが見え、リッツォは迷わず窓の張り出し部分に飛び乗った。


「!」


 薄汚れたガラスの向こうを見て、目を見張った。部屋の中にはベッドがあり、そこには黒髪で青白い顔をした少年が、ろうそくの灯りに照らされて眠っている――それは初めて客観的に見る、自分自身の姿だった。

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