第39話 ハデルは経営不順の原因を発見する
一先ず資料を見せてもらう。
カタリナ達に頼んで書類を持ってきてもらった。
俺の前に「ズドン」という
それを何枚か
「書類は綺麗にまとめられているな」
「もちろんです! 」
カタリナが胸を張って言う。
書類をきちんと仕分けしてくれているのは助かるな。
そう思っている間にもナンシーがどんどんと紙の
「流石に今日一日では俺一人じゃ
「にゃはは。これは僕は戦力外にゃ」
「わ、わたしも無理です」
おい公務員。良いのかそれで……。
「ならボクが手伝おうか? 」
「頼むよ」
「では私は食事の準備を」
サラシャが俺の隣に来て書類を手に取る。
しかし二人じゃまだ足りない。
最終的に顔を合わせることになるから……良いか。
「ロッソ、ベルデ、ブル。手伝ってくれ」
「およびか。マスター! 」
「呼ぶのが遅いですわよ。
「……」
「「「!!! 」」」
俺が声を上げると三リス達がリュックサックから出てきた。
ちょこちょこと可愛らしく俺の方に近寄り口々に言うと委員長達が驚く。
「リスが……
「にゃ、にゃ、にゃにが起こってるにゃ?! 」
「……ひぃぃ」
過剰に震えあがるリナはともかく、混乱する三人。
彼女達の方を向いて説明する。
「彼女達は精霊獣で……、まぁ喋るリスくらいに思ってくれ」
「む、むりがあります! 理解不能です! 」
「精霊獣ってなんだにゃ? 面白
「……」
「まぁ面白可笑しな生物は……間違ってないな」
「違います。れっきとした、誇り高き精霊獣です。面白可笑しな生物と呼ばれるのは不本意です」
「そうだぜマスター。そこら辺をきちんと説明してくれねぇとな」
「そ、そうです。きちんと説明してください! 」
……、いや君達。本当は精霊獣じゃなくてマザーダンジョンコアだからな。
そして彼女達に言う。
「……じゃぁ自己紹介をしてくれ」
「「「え? 」」」
「それが一番早いだろ? 」
俺がそう切り返すと意外だったのか驚いた様子でこちらを見てくる。
そして彼女達は自己紹介を始めた。
その間に俺は書類を幾つか捲る。少し隣を見ると処理された書類が束になっていた。
「……早くないか? 」
「そうでもないよ」
俺の方を向かずに書類に目を通すサラシャ。
流石は英才教育を受けた王女様ってところか。
「今の所
「収入が
「ならそのまま頼む」
「おっけー」
サラシャの返事を聞いて書類に目を戻す。
内容を見ようとするとベルデが声をかけてきた。
「私達は何をすればよろしいのでしょうか? 」
「見ての通り書類整理だ」
「……精霊獣って書類整理できるの? 」
サラシャから鋭い指摘が飛ぶ。
「最もな疑問だが大丈夫だ」
「どうするの? 」
「少しばかし
「あれをするんだな! 」
「了解よ。主様」
「が、がんばります! 」
俺が指示すると書類の束に三リスが移動する。
そして俺達は唱える。
「「「
これで俺達の考えていることが共有された。
そして俺は同時に高速演算と並列思考を発動させる。
「さぁやるとするか」
★
三体が読んでいる情報が俺の中に入る。そして俺がそれを高速演算と並列思考で処理していく。
そしてその時がやって来た。
「なんだこれは! 」
「「「うわっ!!! 」」」
一瞬で俺の集中が切れた。
よっぽど
「ど、どうしたのでしょう? 」
俺は立ち上がりそう言うカタリナの肩を
何か言おうとするカタリナに先んじて、怒気を
「おいカタリナさんや。この契約書は何だ? 」
そう言い一枚の契約書を彼女に見せる。
俺の尋常じゃない雰囲気を
すると得意げに言う。
「見ての通り素材採取に関する契約書です」
「……カタリナ。法律って知ってるか? 」
「もちろん! 」
「で。この法外な契約書についてご説明頂けないかな? 」
俺の言葉を聞いて流石に状況を察したのか彼女の顔から自信がなくなる。
しかし言葉が出てこない。
彼女の肩から手を放しため息交じりに説明した。
「まずこの契約書の内容によるとダンジョンに支払われるお金が国が定めている金額を下回っている。加えて本来なら入るはずの、産出した素材から得られる利益分の金が冒険者ギルドと商会から入っていない。これではダンジョン運営が成り立つはずがない」
「だからこんなにも収入が少なかったんだね。収入の
サラシャがパラりと書類を捲りそう言った。
俺達の言葉に三人はしょんぼりする。恐らく知らなかったのだろうが、それで済まされる問題じゃない。加えるのならば彼女達はこの契約のせいで失職しかねているのだからなおさらだ。
なので怒らずにはいられないだろう。
「……経営不順は違法な契約が原因か。ならば持ち直すのはそこまで
「再契約するの? 」
「契約更新日がもうすぐだからな。それも良いが……、どうせだ。罠を張ってとっ捕まえてやる! 」
俺はそう言い書類に向かう。
高速で書類を処理して片付けた。
三リス達がゴロンとしている。手を叩いて彼女達をこちらに向けた。
そして三リスに指示を出す。
「やるぞ。みんな」
「? このダンジョンの魔力は十分じゃなかったのか? マスター」
「ああ十分だ。だが向こうが必ず食いつくレベルまでこのダンジョンの
「結局私達の力が必要と言う訳ね」
「頼りにしてるぜ。ベルデ」
「……もう」
「ぼ、僕も頑張ります! 」
「おう。ブルはこういう増幅支援系の中心だからな。頼むぜ」
「は、はい! 」
俺がそう言うと三体とも移動を開始した。
そんな中俺はリュックサックからペン型刻印用の魔道具を取り出して、少しそれに魔力を流す。
久々に使うので道具が壊れていないか少し不安だったが、大丈夫なようだ。
「ど、どうするにゃ? 」
ナンシーが恐る恐ると言った感じで俺に聞いて来た。
どうやら俺が
そんなナンシーに俺は一言伝える。
「ダンジョンの——魔改造だ」
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