宇宙人、困惑

『人を信用してはいけない』この言葉が私の心に響き渡る。

彼女へ愛な言葉を伝えることができない。

どうしたらいいのか。わからなかった。

相談ができる相手すら私にはいない。

人を裏切ることが私の中でも当たり前になっていたからだ。


裏切られたくないから先に裏切る

先手必勝と考えていた。


そんな中

彼女からメールがあった。

「今度の金曜日に食事にいかない?」

私は

「いいね!行きたい!店どうしようか?」と返事を返したが困惑していた。

女性と食事なんてちゃんとしたことがない。

母親が食事を作ってくれるからいつも断ってきた。

付き合ってきた女性は私の母親と食事を共にしてきた。

今思えばこれも異常だった。

私は母親が親しくできる人と仲良くしたいと考えていたので必ず会わせてきた。


今回は会わせたいと思わなかった。

理由は三つ

年齢がれ10才離れていること。

子供がいること。

私が本気だったこと。


私は勇気を出して提案をした。

「もつ鍋なんてどうだろう?」


もつ鍋なんてちゃんと食べたことなんてなかったが、お店を探した。

個室になっているお店で予約までした。

この方法であっているのかもわからないくらい素早く動いた。


その日から毎日が楽しくて仕方がなかった。

嫌なことが一切なかった。


そして食事の日になり、

朝出勤する前に母親に今日は夕飯がいらない事を告げた。

母は

どこで、だれと、なにを、たべて、何時に帰ってくるのか根掘り葉掘り聞いてきた。

「友達とだよ」と伝えたあと、

「やっぱり夕飯は残しておいて欲しい。帰ってきたら食べるから」と付け加えた。


母の表情は明るくなり、嬉しそうだった。


その日の仕事はあっという間に終わり、帰宅した。

そしてスーツから自分が考える中で一番オシャレな服装に着替え、クリスマスが近かったのでプレゼントを用意した。

こっそりと仕事終わりに買ったハンカチ2枚だ。

綺麗な袋に入れてカバンに忍ばす。


出かける直前に母親が玄関まで追いかけてきて、

「誰と何をどこでたべるの?」と聞いてきた。

私は少し面倒だなと思いながら

「街で友達とご飯だよ!」と答えた。

母は

「そう。」と感情なく言ったあと


「そのハンカチは誰にあげるために買ったの?」


と聞いてきた。


私の時間が一瞬止まり、

履きかけていた靴の踵のあたりに置いていた人差し指がそのままになった。


「あー友達が誕生日でみんなで祝うために用意したんだよ」

とよくわからない返答をして無理矢理止まった時間を動かした。

そして玄関から振り返ることなく飛び出した。

母の顔は怖くて見れなかったが、なぜハンカチの事を知っていたのかは未だにわからない。


逃げるかのようにバスにのり街へ繰り出した。



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