宇宙人、恋をする
何日かして、病院での暮らしが慣れてきていた。
食事も取れるようになり、保護室からも出た。
今は一般病棟の個室に入っている。
薬の量は入院する前よりも増えた。
どこに対しての効果がある薬なのかもわからないくらいに増えていた。
おかげで常に眠く、呂律が回らない。
口が半開きになってしまっているせいか喉が乾き続けるので、水道の水を有り得ない程飲んでいた。
周りには、独り言を常に話している人、大声で叫ぶ人、泣いていたり笑っていたり、幻覚や幻聴によって暴れてしまう人、危険な状態と判断されると保護室に連れていかれる。
薬の時間になると、ナースステーションに一本の列ができる。看護師の前で薬をもらいそのまま飲み終わるまで、見てもらうのだ。
そして、食事と食事の間の時間を歩いて過ごす人が多かった。まるでゾンビのようにフラフラと短い廊下を往復していた。
私はその中心にある椅子に座り、居心地の良くない孤独を感じていた。
孤独には慣れていたはずなのに、妻と会いたい。
そう私に思わせる彼女は本当に凄いと思う。
私は妻と出会い
はじめての恋をした。
というよりも「これが恋なのか」と理解ができた。
今まで女性と付き合った経験はある。
しかし、それはとてもつまらないものであり、心が動くものではなかった。
いつだって、そこに私はいなかった。
私はその当時、まるではじめてゲームを買ってもらった子供のように全力で彼女を知ろうとした。
そして話しかけた。
私は発達障害の影響で人の話を聞かずに関心のある自分の話をしてしまう。
それが嫌だった。
しかし、彼女はたくさんの質問をしてくれた。
私は話したり、笑ったりを繰り返して喉がかれて顎の筋肉が痛くなった。
少しずつ仲がよくなりメールをしはじめた。
相変わらず私は一度のメールに凄まじい量の文章を送っていた。
そのメールはストーカーと言われても仕方がない。
しかし、彼女は同じくらいの文章のメールを返してくれた。
私は嬉しかった。毎日が楽しくてしかたがなかった。
そんな時、私の頭によぎるもの、
それは
『人はいつか裏切るもの、信用してはいけない』
大切な母の教えだった。
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