宇宙人、母に愛されたい



私は母親に支配されていた。


行動、人格、思想、食事、その他もすべてにおいてだ。


私は母親の為に産まれてきて、母親の理想の人間になろうとした。


そして私は愛されたかった。誰よりも深く愛を感じたかった。



私は母親の言う通りに育った。

何度も何度も叱られ、強制され、奪われ、殴られ、謝り続けた。

反抗期などもなく、当たり前のように大人になった。

女性と付き合うこともあったが、

母親が私の中心であることに変わりはない。

第一優先に母親のことを考え続けていたのだから、当然のように上手くはいかなかった。


私の中の女性は母親であり、

母親の愛以外は認められない人間になってしまっていた。


そして女性に対しての嫌悪も酷かった。

見るもの全てが醜く見えた。

性行為自体吐き気がして、求められるたびに具合が悪くなっていた。

いつもどこでも母親が見ている気がしていたのだ。


そして母親も父親とこういうことをして私を作り出したのかと思いとても気持ちの悪い行為だと女性を抱きながら苦悶していた。


そうして

他人ともうまくいかず、私の救いは母親だけだったのだ。

私の見ている世界はどこまでも色がなく

つまらないものだった。


しかし、

23歳の時、妻と出会った。

私は人生で初めて恋をした。

それが色のない世界を極彩色に染めて

私の時計の針を1秒進めた。


その1秒で頭の中の狭い常識は逆さにひっくり返り寝ていた太陽が目を覚ましたのだった。

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