宇宙人、妻と再会
「死にたい」と口から吐くのは簡単で、行動に移すのは極めて困難、ましてや成功させるのは至難の業だ。
私は所謂「死に損ない」となり、今保護室という名の隔離病棟に幽閉されている。
昨夜は同じように幽閉された女性の大雨のような罵声が響き続けていた。
当たり前だが、私は寝ることができなかった。
しかし朝方にはその大雨はやんでいて
静かに部屋が明るくなっていった。
しばらくして
ガラス張りのトイレを使用する。
きっとこの様子も監視されている。
そんなことはどうでもいい。
いまは自分が犯してしまったことをとても反省をしていた。
そしてなによりも妻が私を捨ててしまうに違いないと考えていた。
私にとって妻は最愛であり、私の人生そのものを変えてくれた大切は人だ。そんな妻を私は最悪な形で裏切ったのだから、「死に損ない」の私を許すはずがない。そう思った。
私には妻がいなくなる世界は恐怖でしかなかった。
前触れもなく
鉄のドアに2回ノックの音が響いた。
ただでさえ静かな部屋なのに、その瞬間ドアから床を這って凍っていくような緊張感があった。
看護師に連れられて入ってきたのは、妻だった。
私は驚いて何もいえなかった。
妻はすべてを理解しているような表情で目の前に用意された椅子に静かに座った。
「すごい部屋だね。」と先に話しはじめた、
私は「そうだね。」と一言返した。
「死に損ない」の私に彼女は普通に会話をしていった。
「何事もなかったかのように」ではなく。
「何もかも現実を飲み込んだように」だった。
そして妻は私にプリンを差し入れてくれた。
「ありがとう。ごめんなさい。」こんな言葉しかでなかった。
保護室の決まりで差し入れてもらったものはすぐに食べなければいけない。
とても甘くとても優しい味がした。
退室の時間が来ると
「明日も来るね」と妻は出ていった。
そこで、私はここに来て
初めて声をあげて泣いた。
監視カメラがこちらを見つめていたとしても、大声で泣いた。
昨日の朝
私は「死にたい」と思い、自殺に失敗した。
最愛が離れて行くことに更に「絶望」した。
今日、妻がきたことで私は「早く明日が来てほしい」と大泣きした。
矛盾だらけの感情が苦しい。
私は一体何者なのだろうか。
やはりわからない。
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