宇宙人、監視される

隔離部屋に到着した。

車椅子にのり、運ばれてくる間に大きな鉄の扉を三つ通ってこの部屋についた。しかも誰も暗証番号がなければ開けられないような扉。病院の入院服に着替えて、体重を測る。自分が知っている体重よりも何故か10キロも軽いことに驚いた。確かに私の腕は以前よりも細くなっていて、アバラ骨も浮いていた。食事を摂っていない訳ではなかった。やはり今日に至るまでに身体に変化は起きていたのだろう。そして採血、子供の頃から血管が分かりにくく何回もやり直しになる。これはもう慣れているが、刺した後にぐりぐりと血管を探すのが痛い。結局その時4回失敗してベテランの看護師さんに変わり一回で成功した。お昼時で昼食が運ばれてきたが、食べる気になってなれない。その頃には、落ち着いてきていて状況も把握できてきた。「俺は朝、マキに別れて欲しいと言われてわけがわからなくなって家でアイロンのコードをドアノブに括って首を掛けて死のうと思った。でも失敗して家から飛び出して…救急車…?」と所々がおかしい。デタラメのような記憶を確かめていた。手をつけていない昼食が乾き始めたころ、この部屋にカーテンがないこと、窓に鍵がついているけど開かないこと、トイレが丸見えなこと、天井にカメラが二つついていることに気づいた。外に出るためのドアにも不思議な位置に小窓がついていた。確実に誰かから見られている、まるでハンニバル・レクターのような気分だった。

これが私の入院生活のはじまりであり、自分とは一体何者なのかを宇宙人が考える時間のはじまりだったのだ。

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