第32話

「じゃあ、お寺とそのキャバクラとかいうところで仕事してるんですね」


「…はい」


悠人さんは、丁寧なしゃべりだ。悠星さんとは大違い。なぜだ?


「忙しいのに、すみません」


「いや、これが仕事なんで」


「え」


「夢が危険を教えてくれます。俺にできることはやります」


「すごい…雪見さんすごいですね!あの、雪見さんには彼女がいるんですか?」


「彼女というか嫁です」


「嫁?」


「妻?」


「そうなんですね。それで、自信がついたんですか?」


「まぁー、うん」


「俺は前から彼女いますけど、自信はあまりなくて。いっぱい考えていたつもりなのに、なんかそんなに深く考えてみたことってなかったのかなと、反省しました」


「いや、俺もそんな考えてないけど」


「…そうなんですか?」


ちょっと困らせた。


「とりあえず、寝ます」


「え!ここで?」


「座ったまま寝れます」


「す、すごい…」


そんなの褒められてもなぁ。


肩を揺すられて目を覚ます。


「もうすぐ電車が来ますよ」


「ありがとうございます。そういや携帯…見てなかった」


最新の着信は、みるくから。珍しいな。


「おはよう」


「雪見さん!住職に聞いたら青森って…今何してるんですか?」


「駅」


「知らなかったです。お仕事はお休みの連絡してましたか?」


「いや?隼人に連絡するわ」

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