第30話

ここで失敗して、噛まれて、入院して…自分を責める。


それは、今までに何度も…。いや、蘭ちゃんがいつも、見舞いに来ていた。


でも今は俺は1人ぼっちで…


「悠人さんならできます!」


雪見さんは、養子。苦労してこられたのに、人のためにあんなに動けるものなのか?おそらく今日ずっと、俺がここに来ると信じて待っていた。


放っておけばいいのに。俺が怪我しても、無視すればいいのに…パパのお寺の人だから?


「悠人は特別なんだ」


そうだ。俺は、パパの子供で特別だ。特別だから、この会社にいるんだ。


「おい、天野。気をつけて」


瞑想を思い出して…

呼吸に意識を、愛犬キャンディに話はできた。そう、パパが帰ってきたあの日だけ。怒られて緊張して。そう、緊張感だ。オリの外から話しかけてみた。


「あの、聞こえますか?」


「あれ?誰?君?」


目がバシッと合った。


「はい!あの、何日か前の夜、変な人見ませんでした?動物園の関係者じゃない人」


「いないよ?それより中に入りなよ」


「いえ。みんなに聞き込みなので忙しくて」


「えー、遊ぼーよ」


「すみません…」


がっと、オリに飛びついてきた。


「また今度遊んで!」


「も、もちろん…」


…冷や汗が出た。


「天野?早く入れよ」


「声が聞こえました。ここは通ってない」


「…うわ、お前目がすごい黄色」


「はい」


「なにその変な目」


「母もこんな感じですよ」


「うわ。知らなかったし…じゃ、次」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る