4本目ーようやく理解、異世界

 自販機の情報をまとめると、以下のようになる。


 ある日の仕事帰り、私は歩いていると異世界に着いた。そしてそばにあった自販機も中身が異世界仕様になって、ついてきた。

 ちなみに自販機曰く、私と一緒にここに来たのは、彼だけじゃないという。

 ……他にも何かあるの?

 嫌だよ?

 二人も三人もエラソーな奴なんて。


『情報それだけ?』

 正直、もう少し欲しい。

 だいたいわかってきたものの、魔法の設定やら、お金、自販機の中身の限界など、知りたいことはまだまだまだまだ……たくさんある。

 が。

 このアホ自販機の答えはこうだった。

『疲れたので、文字打ちにしますね』

 文字打ちぃ?

『どうする気なの?』

『ラベルにでも書いときます。それでも読んでおけばいいんじゃないんですか?』

『要は金払えと』

『対価はいるものでしょう』

 うっわぁ。

 むっかつくぅ。

 さっき、もっと多めに蹴っておけばよかった。こう、倒すような感じで。


 だが、美肌を止められても困るので、ここは穏便に。穏便に。おんびんに……

 私は水を飲んだ。

 もういいや。

 少女を待たせてしまっている。最後に一つだけ質問だ。これだけでも結構違う。

 水を口に入れる。


『ねえ。最後に一つだけ。あなたずっとここ?それとも動ける?』

『あなたよりは動けます』

 ……蹴っていいかな?いいかな?

『ええとじゃあ歩くってこと?』

『最後の質問じゃなかったんですか……全くしょうがないですね。こうするんですよ、よく見ておくといいんじゃないですか?』

 そう言って、自販機はボフッと音を立てて、煙に包まれた。再び目を開くと、そこには既に自動販売機がなかった。

『え。どこ行ったの』

『良目って名前のくせに目ぇ悪いんですか?草むら探ればいいんじゃないですか』

 要は探せ、と。

 なんでいちいちこの箱は言葉にトゲがあるんだろうね?私、目ぇいいよ?

 すぐに私はプライドを持って見つけてやった。拾い上げる。自動販売機は一対の耳飾りになっていた。

『つけろってことね』

『ようやく脳みそが動きましたか』

 ……ごくん。水を飲んで通信を切る。


 お前はもう用無しだ。


 ……まあ、美貌にしてくれたの分は許してやろう。私は残りの水を、欲しそうに見ているアメダマリアに渡した。彼女は「嬉しいです!ありがとうございます」と深く一礼して、受け取ってくれた。

 スカートちょっとあげて礼しちゃってるよこの子。礼儀正しすぎるよ。もうちょっとラフでいいからね?お姉さんが許すから。

 うん……癒しだ。

 その純粋な笑顔が癒しだ。


 なんで、自動販売機もこんないい性格じゃないんだろうね?


 手に収まった飾りをじろりとみて、私は握りつぶすような感じで耳につけた。






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