第2話 ボイルエビ

 夕方になると焦燥感に襲われ、空を見上げては自分の存在意義を問うのだ。「私はここにいていいのだろうか」と。

 仕事を辞めてから1ヶ月。有給消化を含めると2ヶ月。家の中でする事もなくスマホを眺める。

 朝はアラームを止めてから二度寝して1時間後に体を起こし、朝ごはんを食べたら親の買い物に付き合って、お昼ご飯を食べたらSNSを見て。夜ご飯を食べてお風呂に入ってまたSNSを見て。正しくぐうたら生活。

 『今頃あの子は仕事してるんだろうな』と思いながらスマホを見ると時々虚無感に襲われるのだ。

 人より口数が少ない私は、頭の中では色々考えていたりする。『きっと頭の中の言葉が筒抜けだったらうるさいだろうなー』なんて事は常に思う。同様に感情もあまり表には出さないので、嬉しいも悲しいも第三者から見れば紙一重なのだ。

 だからこそ1人で悩む事も多い。

 ここ最近の悩みは1つ。仕事をしていない現状について。社会から切り離されたような疎外感と何もしない私が家に居続ける事の劣等感。人間としての尊厳を失い、生き続ける意味が分からなくなるのだ。考えすぎなんだけど。

 私は今のままでいいのか? 邪魔だと思われてない? 平日の昼間から親と買い物してて変だと思われてない? 私はまた仕事をして、今日が何曜日なのかすぐに答えられるようになる?

 こんな事をぐるぐる考えている。

 実はこの第2話のエッセイを書いている今日は履歴書の志望動機欄を考えなくてはいけない。考える事の多い19歳2ヶ月なのである。このエッセイを読んでくれている方の中にも、学生時代にこんな事を思った人も多いんじゃないだろうか。「ギリギリじゃないとやる気出ない」私は本当にこの通りで、まだ大丈夫が大丈夫じゃなかったりする。ただ運良く私は短期集中型なので困ったことはないけど。履歴書は今夜本気で頑張ります(笑)

 と、そんな事はさておき。こんな具合に悩み事を解決しようにも別の事が頭に浮かんで改善策を生み出せないのだ。

 今の私を一言で現すのならこれしかない。

虚無感

 何物もなく、むなしいこと。

 仕事もせずに生き続ける私って、最低だ。むなしい。このままでは廃人になってしまいそうで、外に出た時開放感に満たされる。「助かった」と心から胸を撫で下ろす。何も解決していないのに、私にとっては外に出る事が唯一の救いだ。

 もやもやしながら生きていると、解決したのに同じことをまた悩み、同じ回答に行きついてまた悩む。

 結局のところ、こうして私のもやもやを文字にする事が1番楽になったりする。語彙力も知っている言葉の数も、エッセイや小説を仕事にしている人に比べると半分以上知らない。それでも知っている言葉だけでどうにか私を伝えようとすればするほど、自分を知れるのだ。

 だからこそ、ここ数日間の私は心が満たされている。仕事はまだないけど、私にはここがある、と。


 ボイルされたエビの殻を剥きながら、私も自分の殻から抜け出せれたら、もっと人生楽しめそうだなと考える。無期限の長い長い春休みはいつ終わるのか。次回の3話では内定がもらえているのか。分からないことばかりの未来の話。しかし、そんな未来の事は未来で話そう。

「そういえばさ、エビの尻尾って、ゴキブリの羽と同じ成分らしいよ」

「え、きも」

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