今を生きる私
青下黒葉
第1話 クリームスープパスタ
19歳2ヶ月。就職面接に落ちた私は、絶望の末に東京を目指した。学生の頃に憧れた、人前に立ちたいという夢を叶えるために、芸能事務所のオーディションに参加し夢を勝ち取るのだ。
なんて想像を膨らませてながら、私は不合格と書かれた書類と封筒を破り捨てた。絶望とは言いながらも、嬉しいも悲しいも感じない。次に繋げるには何かしら感情を抱いた方がいいような気もしたが、そもそも自分自身が何をしたいのかも分からない。それこそ、冒頭に描いた未来は確かに私がしたい事ではある。だけど、それを誰かに伝えることが出来なくて葛藤しているのだ。
今日もこのサイトを見ながら夢を膨らます。地元の小さな劇団。私もここに入れば何か変われるかもしれない。『運が良かったらスカウトされたり?!』なんて浅はかな夢を見るくらいには能天気に生きている。
高卒で就職した職場は居心地が悪く、周りからも「早く辞めな」と言われていたくらい状況はよくなかった。自分で決めた職場ではなかった事もあって、潔く仕事を辞めたものの、当初は『3年間働いて、その間に私が本当にしたい事を見つける』と言いながら、1年にも満たない間に辞めたのでスケジュールが大きく変わった。
する事を失って2ヶ月。『SNSに力を入れてみようかな!』とか『ハンドメイド作家になって新しい物を作ってみようかな!』と色々考えている今なのです。
しかしこんな私でもきちんと理解している事がある。才能と思いの強さは比例しないという事を。どれほど足掻いても、才能、魅せる力、人を魅力する力を持っている人には敵わない。思いの強さで打ち勝つ人もいる。そんな人は、実は自分が気づいていないだけで、人を魅了する力、応援したいと思わせる何かを秘めているのだ。
最近では世間一般的に使われるようになった『推し』という存在。私にはその存在が2名ほどいる。誰かとは言及しないが、2人とも自身が持っている輝きでたくさんのファンを獲得している。原石が磨かれていき、そこにその輝きを際立たせるための、ファンという名の付加価値をつけて生きている。そんな存在が羨ましい。誰かに必要とされて求められる。私もそんな存在でありたいと思うのだ。
今朝の空は雲一つない晴天で、室内でいればぽかぽかと暖かいこの日に、私はコンビニで買ったクリームスープパスタをすする。初めてのエッセイがこんな物で大丈夫なのかと不安になりながら採用情報をチェックした。
「あ、これ面白そう」
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