第53話 丘頭桃子警部の捜査(その17)

 捜索開始から3週間が過ぎたが発見の報告はない。一心からは荒川及びその河川敷の捜索を終了し、明日から中川周辺を捜索すると連絡が来た。

 

 1か月が過ぎ、川及び河川敷の捜索は終了した。

 その3日後、ボンベ捜索班が、北区北赤羽駅から線路沿いに500メートルほど離れた廃工場でボンベを発見したと連絡が入り、丘頭警部は居た堪れずに現場へ飛んだ。

 現場は山井田産業(株)の工場跡で、その会社の代表者に事情を話して敷地内の捜索をした結果ボンベ発見に繋がったのだった。

 入り口にはチェーンが掛けられ車の出入りはできない。人がやっと通れるほどの隙間を通って開けっ放しのシャッターを潜り、大きな建物に入る。天井まで10メートルはありそうだ。その端に物品庫のような小屋があってドアノブを回すと鍵は掛かっておらず、結構力を入れて引くと錆付いたドアがギギギッと音をたてて開く。

 室内には大小各種のボンベが20本ほど壁に沿って立っていて、それらをチェーで固定している。その一番手前に該当ボンベが2本、無理やり押し込んだとみられチェーンに擦った傷がボンベの端から端までついていて塗料が剥げ落ちている。

そして床には多くの廃材や何かの部品のようなものが散乱していて、それらに混じってチューブや器具が捨てられていた。

それから1時間ほどして鑑識の現場撮影や証拠品の採取が終わったようだ。

 

 1週間後、舛上椋に逮捕状が出た。自宅と会社の捜索令状もでた。

母親が自首すると言ってから既に1か月が過ぎているが、椋は未だ自首していない。

 

 舛上宅と舛上コーポレーションと同時に家宅捜査に入り、室内や社内、車内などを捜索して、椋のゴルフバッグなどの証拠品を押収した。

また、ボンベが見つかった工場近くのマンションの監視カメラがそこを通る椋の車を写していた。

 

 一方、舛上紅羽が綱紀に面会したその日のうちに、佐音綱紀は舛上椋に対し忖度したと謝罪したので、丘頭警部は少々説教をして帰した。玄関前には紅羽母さんが迎えにきていて綱紀に抱きついてうれし涙を流しているのが見えていた。

 

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