第52話 岡引一心ボンベ発見か

 大規模なボンベの捜索が始まって1週間が過ぎてもこれと言った成果はみられていない。

一助は毎朝7時にはバルドローンを操縦して荒川河川敷に向かい、上空からボンベを探している。その捜索済み範囲は一心の電子地図に色塗りされてゆく仕組みだ。

発見した場合はその画面に「×」印が表示され、一心が現場へ行って確認することになっている。

荒川西岸の二分の一程が終了している。

 

 捜索開始から9日目の昼めし前、PC地図に「×」印が点滅し一助から「一心! ボンベを発見した。ポイントを送ったから確認してくれ!」と嬉々とした声で連絡が入った。

数馬を助手席に乗せて現場へ急行するのと同時に丘頭警部に一報をいれる。

「警部、ボンべを発見したかもしれん。確認したら連絡入れる」

「あらー、見つかったの? やったねぇ。確認の電話待ってるわよ!」

丘頭警部の声は喜びに溢れている。

 その位置は荒川が東西に流れている池袋線の板橋区西高島平駅に近い場所だ。河川敷の道路沿いに車を停めて、そこからは徒歩だ。数馬にPCを持たせてその「×」印を目指す。上空から一助が「もっと右方向だ! とか左だ!」とか五月蠅い。

 PC上ではその位置に到着したようだがボンベは見えない。草が1メートル近く生えているので隠れているのだろう。PCを仕舞って二人で草を分けながら進むがなかなか見つからない。しびれを切らしたのか一助も近くに着陸して三人で探す。

 10分ほど探していると「うわー! 一心! 爆弾だっ!」一助が尻もちを付いて騒ぐ。

慌てて一心と数馬が駆け寄り慎重に草をかき分けそいつを見ると、爆弾じゃない不発弾だ。

「警部っ! 不発弾だっ! 処理頼む!」

丘頭警部に電話を入れ、付近の草をなぎ倒し丘頭警部が来るまで人が近づかないように見張り役になる。

10分後、何台ものパトカーのけたたましいサイレンの音が近づく。

 

 丘頭警察が現物を確認して署に連絡し、黄色い規制テープを不発弾を中心としてかなりの距離をとって円形にぐるりと設置する。

「一心、ありがとう。ボンベじゃなかったけど、これも危険物だから事故が起きる前に発見できて良かったわ」

そう言われ、ちょっと恥ずかしかったが、後を頼んで一助はバルドローンで捜索を継続し、一心と数馬は事務所への帰路につく。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る