第7話 丘頭桃子警部の捜査(その1)

 丘頭警部は捜査会議が始まると早速捜査員に状況報告を求めた。

―― 舛上海陽は、舛上コーポレーション(株)の社長の長男として浅草の家で生まれ、高校を出るまでは温厚で真面目、学校の成績もいつも上位に食い込んでいた、大学では父親の命で経営学を学び親の後を継ぐことを考えていたようだ。

そして、大学を卒業し父親の会社に秘書として就職すると、周りからは社長の息子として祭り上げられ、しだいにそうされるのが当たり前だと思うようになってゆく。自分の意見は絶対通るし、間違っていてもそれを指摘する社員はいない。

 父親からは経営者としての意識、責任と、親族の中での立場を強く意識するように求められ、三代続いた今の家系で舛上コーポレーションを潰さないのは勿論、事業拡大を図ることとスキャンダルは命取りになり兼ねないから起さぬよう厳に注意され、それが叶わなければ社長にはできないし社を追放することもあり得るとまで言われた。

以来、人が変わったように厳しくなった、と側近たちから証言を得た。

 28歳で役員になり30歳で結婚して代表権を持ち、そして椋が生まれる。

その頃には、他人の意見を聞かず、命令に逆らうものは即刻切る姿勢を顕わにするようになっていた。

海陽40歳のときに父親が亡くなり、傲慢経営が始まる。

 社長を良く言う従業員は皆無のようだ、意に反する発言をする者には人事上の処分が行われるため、中枢部で社長に意見する者はいなくなった。腰巾着だけが残っている。その彼らでさえ社長を良くは言わないのだ。

関連企業、子会社、下請け会社からも良い話は出てこない、30数社に対して事情聴取を続けている。――

捜査員からの報告は大体そんな様だった。

 

 仮に事件だとすると捜査の対象者は数十人にも及びそうな感じだ。

ただ、殺害目的でCO2を使ったという事件は、丘頭警部の記憶にも警察の犯罪データの中にも無かったので、その特殊な殺害方法を選択した理由を突き止めることが、犯人の特定につながるのではないかとも考えていた。

 

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