バッドエンド2 挫折の果てに極めるもの

「それで?

 このおいしい権利は誰に委ねられるのかな?」

「……そ、それは……」


 宿題を誰に見せてもらうのか――そう道杖くんに尋ねられた僕は……結局誰も選ばなかった。

 宿題を忘れた己が責任を果たすべく、僕は残された僅かな時間でも構わないと挑んでいき――玉砕した。


 数学の授業で案の定当てられた僕は、中途半端な式で解こうとして宿題をやって来なかった事を見抜かれてしまったのだ。


 当然のように説教を喰らった上、罰として日々の課題を割増で課される事態となってしまった。


 結果僕は、梅雨の日々を数学漬けで過ごす事となったのだが――そんな日々の中で、僕は覚醒しためざめた


「あ、あはははは!! 数学が、こんなにも楽しかったなんて――!!」


 青春が数に塗り潰されていく事への現実逃避だったのかどうか――今となっては分からない。

 いずれにせよ、僕は数学の奥深さに目覚め、そこにどっぷりと嵌っていく事となった……深く深く。


 それから数年後、僕は幾つかの新たな数式、定理を見出すに至り、世間から脚光を浴びた。

 それらは新たな境地に人類を押し上げる可能性があると評されており、僕は若くして富と名声を過分に得た。


 ――――だけど、その代わりに僕はいつしか一人になってしまっていた。


 あの梅雨の日々の中で何を失い、何を見落としていたのか……僕はその答を出さねばならない。

 それが今現在の僕の課題だった。


「何故……一体何故……?」


 そうして僕は、たった一人の研究室で思案に明け暮れる。

 晴れも曇りも雪も、雨も――関係のない、心の檻の中で。




 バッドエンド――?

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