第25話 バイオ野郎
「やっぱこんなもんか。」
数十本のナイフはある程度躱されたが、しっかり刺さっていた。最初に突っ込んできた二人が既に息絶えていて、後ろにも何人か倒れたやつがいる。所詮モブはモブか…
呆然として動かない敵。
「来ねぇならこっちから行くぞ。」
数十人で固まっているため、俺が突っ込めばむやみに武器を使えなくなる。だから俺は跳躍し敢えて敵のど真ん中に降りた。
次々とナイフを急所に刺し、的確に切り刻んでいく。あっという間に残り人数が一桁になった時だった。
突然頭上から鉄球が降ってきて、それが残りの敵を潰す。
「またか……」
降りてきたのは予想通り、例のバイオ野郎だった。味方であるはずの奴らを全員殺し、こちらに向き直ったそいつは、ゆっくりと俺の方に歩いてくる。
全てが終わってから思ったことだが、こいつは登場シーンもバイオだった。いきなり上から降ってくるのは恐怖映像だ。
右手には相変わらず鉄球を持っていたが、左手には巨大な太刀を持っている。鉄球と太刀なんてアンバランスにも程がある。でもこいつなら簡単に扱えるかもしれない。油断はできない。
ある程度の距離を保ちつつバイオ野郎に向かってナイフを投擲するが、当然弾かれる。氷もダメ、刃物もダメ。だったらこれでどうだと重力をかけても、ビクともしなかった。
「そいつは私の最高傑作だ。簡単には…いや、お前程度では勝てないだろう。」
いつの間にか糞研究者も入ってきていた。
こいつに関しては後回しだ。このバイオ野郎を殺ってから、ゆっくり殺る。
ひとまず両手に能力で作った太刀を持つ。弾かれても折れはしないだろう。
「やってしまえ。」
糞研究者の一言でバイオ野郎が突っ込んでくる。鉄球を回避し、袈裟斬りを試みるも太刀で防がれ、俺は敢えて距離を取らずに、鉄球を振れば俺だけでなく自分にもダメージを与えてしまうような近距離で戦い続ける。
「これで鉄球は無効化できた…はずっ!」
バイオ野郎は太刀を無闇に振り回すが、この程度なら問題ない。こいつは逃げられることを想定して作られたのか、近距離は苦手なのかもしれない。
しばらく、太刀同士が打ち合う音だけが響き渡る。その均衡を崩したのはバイオ野郎だった。鉄球を放り投げ、空いた手にさっき殺した奴が持っていたハルバードを持つ。
その瞬間、動きが一変した。自分から俺の懐へ突っ込み、近距離でハルバードを振り回す。太刀で辛うじて防げているが、このままでは俺の体力が切れて終わる。仕方ないか…
「出てこい。」
俺は封じていた”俺”を呼び出し、2人目の俺を出現させる。そして大剣を装備させ、2対1の近距離戦が始まった。
「勝手に封じやがって…後でちゃんと話聞かせろよ。」
「生きて帰れたらな。」
そんな話をする余裕が出るほど2人になってからはバイオ野郎が押されていた。これ以上変なことが起きる前に殺ろう、そう思った時。
「だったら私もそうしようか。」
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