第24話 自分の気持ちと戦闘狂の気持ち

 研究所内に戻った俺は自らの意志で”俺”を封じ込め、己の道徳心、もとい正気を手放した。冷静さは保っているが、この時の俺の中にあったのは怒りと憎悪、そして強い罪悪感だけだった。仲間を気絶させたのも追いかけてくるのを防ぐ為だ。


 もう加減をする必要はない。敵は一人残らず殺す。誰も…逃さない。


「ノコノコ戻ってくるとはねぇ。君はいつも私の思う通りに動いてくれる。」


 また放送だ。これは研究所外にも聞こえているのだろうか…


「仲間を殺されて、怒りで戻ってきたってところかな?自ら死にに戻るとは…馬鹿だね。でも、私は優しくない。この建物にいる全ての人間をお前の元に集める。簡単に死なない様頑張ってくれたまえ。」


 それを聞いた俺は仲間が捕まった時集められていた広い場所に移動する。そして、奴らが来るのを無言で待った。どんな風に殺してやろうか…さっさと殺す。糞研究者を見つけ出して…


 考え事をしている最中に飛んできた銃弾を上に飛ぶことで躱し、入ってきた男めがけ飛び蹴りを放つ。それだけで体育館の壁にめり込み、簡単に死んだ。人って…こんな脆いんだな。簡単に死ぬ。つまらない。こんな簡単に殺すなんて…もっと苦しませないと…


そんな事を考えていたらいつの間にか沢山の戦闘員が入ってきていた。


「そんなに…死にたいんだな…」

「気をつけろ!さっきとは気配が違…」

「うるさい。」


喋り始めた男を重圧で押し潰す。グシャ、音がして中身が飛び散る。それを見た奴らは俺に向かって銃弾を放つ。さっき避けられたばっかなのに…学習能力がないのか…


 飛んでくる弾は全て重圧をかけて地面に落とす。段々敵の顔が青ざめていく。


「て…撤退!逃げろ!」

「あ?逃げられると思ってんのか?」


 入り口と出口に障壁を展開し逃げ道を無くす。勢いよく突っ込んだ奴らは障壁に激突。馬鹿みたいだな。


「なんだ…これは…」

「逃さねぇよ。全員殺すまではな。大人こんな人数いて俺一人から逃げるなんて情けないな。」


 なんでこうもここには煽り耐性が無いやつしかいないのだろうか。この一言でキレた。銃を捨て全員が斧槍とも飛ばれるハルバードを手に持つ。全員同じ武器とか…ほんと死にたいやつの集まりだな。てかどっから出したんだよそんなデケェ武器。

 

ハルバードは斧の上に槍がついたような武器で、集団戦で振り回すには相当な腕前がないと自殺行為だ。だが油断はしない。当たれば無視できないダメージを喰らう。でも…なんだろう。こんな状況なのに…戦うのに快感を感じる。これが戦闘狂ってやつなんだろうか。


 俺はポケットからナイフを二本取り出し構える。実際は能力で作っているが、相手からはポケットに入っているように見えるだろう。


「そんなナイフごときで勝てると思うなよ…」


とは言うものの突っ込んできたのは二人。ハルバードを振り回すのに集団戦は辛いと理解していたようだ。


一人は突き、一人は薙ぎ払い。バックステップで回避し、相手の腕目掛けてナイフを投擲する。


「ちっ…当たんねぇのかよ。」


 だがナイフは二本とも回避される。ブーメランのように戻ってきたナイフを手に持ち、さらに空中に数十本のナイフを浮かべる。


「これなら…どうかな。」


そして俺はそのナイフを全て相手に向けて発射した。


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