第22話 行け!
延々と続く殺戮。相手は無限増殖するクローン。ただただ体力だけが消耗されていく。このままいけば体力切れでこっちが負ける。昔打ったような威力で攻撃すれば片がつくかもしれないが、そうすれば研究所そのものが崩れるかもしれない。どうすれば…
【とわにぃ、聞いてほしいの。】
【りめあか、どうした?】
皆念話に慣れたため、戦闘、作業中ではあるが普通に会話できる程度になっている。
【あの増え続けるクローン…多分どこかに本体とかがいて、そこから増えてると思うの。】
【本体…か。確かにそうだな。探して潰すべきだな。】
【なるべくここには人を残したほうが良い。じゃないといざという時対処できない。】
高音の言う通り、一人、二人程度で行くべきだ。本体が動ける状態なら間違いなくクローンより強いはず。なら行くべきは…
【とわにぃだよ。行くべきなのは。】
わかってる。俺のせいでこんな事になった。そして誰も気づいていないが段々と包囲されている。距離はまだかなりあるが、恐らくクローンだろう。どんどん人数が増えて、本当に少しずつだが近づいてきている。だったら尚更責任を持って本体を潰すべき…でもここに皆を放置して行くのか?もし何かあったら…
【とわにぃ、行って。どうせ責任感じてるんでしょ、もっと頼ってよ。】
りめあの言葉が重く俺に響く。いつも俺は一人でどうにかしようとしてきた。斗亜や玲に能力の事を話したのが何故なのか自分でもわからない。隠せば、こんな事にはならなかった。正しい選択を…冷静に判断を…早くあいつを殺す…
【迷わないで!こいつらの本体はきっともっと強い…とわにぃが行くのが確実なの!】
それでも俺は決められなかった。正常な判断とは何なんだろうか。まだ迷う。つまり俺は皆を信じられていない…。これだけ言われているのに、頼ろうと思えない。でも俺以外に行ける人はいない…
戦闘中であるのに関わらず、俺は立ち尽くしていた。
「…っ!もうっ!」
「りめあ?」
死角から出てきたりめあは俺の目の前まで歩いてきた。
「責任がどうとかじゃないの!皆気づいてるんだよ!包囲されてるのにも、膠着状態に見えて段々追い詰められてるのも!なのに迷わないで!できるでしょ?できるから迷ってるんでしょ?行って!お願いだから!」
直接、安全な所を出てまで俺を説得しに来たりめあ。目には涙が浮かんでいた。こんな思いさせて…やっぱり俺は駄目なやつだ。沸々と湧いてくるのは自分への怒り。だが、行くしかない。こんなに信じて、頼ってくれる人がいるんだ。俺も信じよう。頼ろう。
りめあの頭を撫でて俺は呟く。
「死んだら殺すからな。生きろよ。」
「うん。行って、とわにぃ。いや…永遠。」
「ここに来て呼び捨てか。フラグ立てんじゃねぇよ全く。」
俺は障壁を今できる限界まで硬くし、死角の周囲、クチナシ達をも障壁で囲う。
【ごめん。話は聞こえてたよな、皆。ちょっと本体殺しに行ってくる。頼んだ。死ぬなよ。死んだら…】
【殺すんだろ?こっちこそ、死んだら殺すからな。早く行けよ。】
言われてしまった。高音に軽く腕時計を触って笑みを向け、笑みを返された俺は走り出す。後悔しないために。皆を信じるために。
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