第21話 減らない……

「クチナシは皆に能力の発動方法のレクチャーを頼む。威力なんて気にしないから。俺らが戦ってる時、相手を的にして練習すれば良い。そして高音。クチナシのレクチャーを理解した奴にサポート系の応用を教えてくれ。ゲームっぽく言えばバフ、デバフだな。」

「「りょーかい。」」


 俺達は玄関へと走りながら最終確認をしていた。先程言ったように俺と玲、斗亜で基本的には叩く。場合によってはクチナシや高音に出てもらうことにもなるが、それ以外は後方支援だ。


 人の気配が強くなってきている。そして入り組んだ通路の角を曲がった瞬間。


「なっ…障壁っ!」

 待ち構えていたのは数十の銃口だった。咄嗟に障壁で防ぐことは出来たが、少しでも反応が遅れていたら蜂の巣になっていた。奴らの死角に戻り、簡単に作戦を伝える。


【ここからは念話で会話をする!さっき言ったとおり、この死角でクチナシ達は動け!俺達は行く!】


 そう言い俺と斗亜、玲は戦闘を開始する。俺は障壁を、こっちからの攻撃だけは通用するよう調整する。


【銃弾を防げるのもずっとではない。だからすぐ叩け。】


 俺は氷弾を相手の手に当てる。銃さえ使えなくすればある程度楽に殺せる。玲は漆黒の刀から飛ばした斬撃を実体化させ、敵の四肢を切断していく。そして斗亜。あいつは何をするのか…と思えば、何もしていなかった。いや、何もしていないわけではない。ただ、斗亜本人は動いていない。だが障壁の向こうでは斗亜のような見た目の何かが肉弾戦で戦っていた。分身かよ…。


【障壁が破れる!高音、次壊れるまでに頼んだ!】 

【りょーかい!】


 普通に連絡が通じるということはあちらは大丈夫なのだろう。そして障壁が銃弾によって破れ、俺がもう一度障壁を貼るまでの一瞬。後方から炎、氷、土などの弾が飛ばされた。クチナシのレクチャーは上手くいったようだ。


【障壁、二重展開。】


 障壁を二重に、俺達の前と敵の後ろに設置。そして障壁の特徴を活かした作戦を実行に移す。


【斗亜、炎でも氷でも他属性でも良いから野球ボール程度の球作ってあっちに向かって全力投球してくれ。】


 そして障壁を通したものに弾力を与え、何かに当たれば跳ね返るようにする。これで斗亜の投げた属性球は障壁内で半永久的に跳ね返り、相手の戦力をかなり削げるはずだ。玲の放つ斬撃も跳ね返るから何もしなくても敵が死んでいく。それでも攻撃は続けるが。


【永遠、まだ障壁は壊れてないが準備はできた。】

【わかった。】

【斗亜、玲。一瞬頼んだ。】


 俺は死角に移動し、高音から”それ”を受け取って戻る。


「斗亜、玲。これを」


敢えて念話は使わず、二人に”それ”を渡す。


「腕時計だ、つけとけ。」


それだけで二人は理解した。腕につけ、敵に向き直る。これだけ殺してるはずなのに人数が減る気配がない。どれだけの人数がいるのだろうか…


「頑張っているな諸君。」

「また来たのか糞研究者。」

「黙れ。せっかく気分が良いからヒントを与えてやろうと思ったんだがな。」

「頼んでねぇしお前の気分に興味はない。そもそもお前という人間に興味がない。殺す側と殺される側。それだけだ。」

「何も出来ないクズがよく言うな。まぁ、せいぜい無限増殖するクローンとここで戯れてるといい。」


 そう言って突然現れた糞研究者は去っていった。無限増殖…道理で減らないわけだ。


【どうする?永遠】

【今はとにかく殺し続けるしかない。全員打破方法を考えてくれ。この状況できついのはわかるが、俺だけじゃ無理だ。】

【任せろ。】


 頼れる仲間がいるだけでこんなにも全力で戦えるんだな…そう思いながら俺は戦闘を続けるのだった。

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