第7話 再会と最先端の本気、不穏の足音
「ちっ…面倒くさいことになりそうだな…」
クチナシに案内を任せ部屋に戻ろうとした俺は部屋に入らず息を潜めていた。部屋から人の気配がする。入ろうにも入れないが、ここで時間を潰せば皆のうちの誰かが俺を呼びに来てしまう。そうなる前にどうにか…いや強行突破した方が早い。そう決め、俺は警戒しながらドアを開ける。そこに居たのは…
「たぬ…なのか?」
「永遠、久しぶり。」
髪型はショートウルフのベビーピンク、目は灰色。160センチ程で、14歳。旧カオス組ではないが、カオス組と仲が良かったたぬが何故ここに?ここに集められたのはカオス組の中でも更に少数の、”惨劇”の被害者のみのはず…
「なんで私がここにいるのかでしょ?永遠には記憶があるし教えておくね。私の親があの事件の計画メンバーに入ってたらしい。あんな惨劇の計画だとは知らずに。それで勝手に罪悪感を感じちゃって、ここを監視してるまともな大人の手伝いをしているの。」
「ってことはつまり…もうできたのか?頼んだ腕時計。」
「そういうこと。」
そう言って持っていたアタッシュケースを開けるたぬ。中にはたくさんの腕時計が入っていた。ありがたい。だが…
「それは良いとして…お前はこれからどうするんだ?」
俺は一番の疑問を口にする。折角会えたんだし一緒に過ごしたいとは思うが、皆には…あの悲劇の夜の記憶はない。たぬも一緒にいればいつか重圧に潰される。罪悪感を感じているなら尚更だ。
「皆には記憶がないからね…まぁ、この腕時計で私とも連絡が取れるようにしておいた。来るときは連絡するよ。これ、永遠用の腕時計ね。」
「あぁ…ありがとう。」
俺用に準備したという時計は、俺好みのシンプルで黒い腕時計だった。恐らく皆のイメージカラーで作ったのだろう。
「じゃあ、私はそろそろ行くよ。ほら、クチナシが来たみたいだよ。」
「そうだな。色々ありがとう。」
「…気をつけて。ここを監視してる奴の中にはまだ諦めてない奴がいる。」
「……。わかってるよ。」
最後に忠告を残し、彼女は窓から出ていった。それと同時に、クチナシがやってくる。
「永遠いる〜?皆待ってるよー!」
「ああ、今行く。」
俺はアタッシュケースを持って食堂へと向かった。移動中、クチナシにそのケースは何かと聞かれ、もう届いたと言ったら顎が外れるどころか床につくんじゃないかってくらい驚いていた。
「お、やっと来た。もう飯作ったっすよ。」
「きりか、料理したいって言ってたもんな。ありがとう。」
「私達も手伝ったからね!何もしてないわけじゃないから!」
謎の張り合いを見せるクチナシ。とにかく皆に感謝し、冷めないうちに食べようと言うことで席につく。
「「「「「いただきます」」」」」
そして始まった食事。賑やかに喋りながら食べる皆を見て、俺は再三自分に問いかけた事をもう一度自分に問いかける。何があっても全員守る。出来るよな?俺なら出来る。だから今は、皆に悟られないように日常を楽しもう。
「皆、そういえば腕時計もう届いたんだよ。飯食い終わったら配るな。」
「え?それ俺の分あるん?」
「ああ。後から来るだろう人も全員分頼んでおいた。」
「流石永遠だ。」
数十分前に来たばかりなのだから、ルナが心配になるのもしょうがないだろう。だが俺はしっかり全員分頼んでおいたから問題はない。まだ来てないやつも含めてな。
「「「「「ごちそうさまでした」」」」」
「食器はそのままシンクに。後はこれがやってくれる。」
そういって俺はリモコンを取り出す。
「でた最先端。」
雪愛は最先端だから、で満足することにしたようだ。一々突っ込んでいたらきりがない。
「じゃあ。腕時計配るか。皆座れよー。」
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