第6話 るばあの秘策と第2試合

「喰らえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


 俺はるばあを信じて動かない。そしてクチナシの放った数百のボールが俺めがけて飛んでくる。


「「…は?」」


 だがそのボールが俺に届くことはなかった。俺の目の前に透明な壁があるかのように、ボールはすべて跳ね返る。その光景に後方で見守っていた皆も含めた全員が目を丸くする。


「ね、言ったでしょ?動かないでって。」

俺は黙って頷く。やはりとんでもない秘策を用意していたようだ。


「そして、これも忘れずにね。」


そう言うと、るばあは最後まで姿を見せないままクチナシにボールを当てた。


「今のボールが勢い強かったら私泣いてたよ。」

「まぁまぁ…ごめんな。ちょっとふざけすぎたな。」


俺はクチナシに謝罪し、皆の方を振り返る。


「良し、お前ら!今度はお前らの番だ。俺とクチナシ、るばあ、にんじんは後ろで見てるから。思う存分楽しめ。」

「まぁあんなの見せられたらね。やる気になっちゃう。」


 やる気に満ち溢れたみぃあの返事。他の皆もウズウズしている。そしてようやく姿を表したるばあを連れ、俺達はステージの上に移動する。


「さっさと始めるぞ!散らばれー!」

「えー、見てるだけぇ?」

「お前はさっき散々分身して遊んだだろ。」


 にんじんの苦情にツッコミを入れ、俺はボールを放る。今度は一つだ。そしてそのボールが床に触れると同時。


「楽しんでるねぇ。混ぜてくれない?」

「お、ルナ。遅かったな。」

「親が準備遅くてね…後日付け間違ってた。」


 体育館の入口に旧カオス組古参メンバーであるルナが現れた。彼は初対面の人にはコミュ障を発揮するが、慣れるとめちゃノリの良いタメ口だ。容姿はショタ。160cmの短髪、髪色はオレンジ。旧カオス組の中でもかなりの古参であるものの、あまり表に出ることはなく面識のないメンバーが何人もいる。まぁこのカオスドッジで仲良くなれるだろう。


「楽しんでるね、ってことは見てたんだな?」

「まぁね。」

「なら混ざれ。始めるぞ!」

「りょーかい。」



 俺は一度ボールを回収し、もう一度放り投げる。体育館中央にボールは落下。最初にボールを持ったのはるきだ。


「タピオカ好きだしタピオカっぽい技思いついた。」

「威力は程々にな。」


 一応釘を刺しておく。耐久力は上がっているといえ俺の投げたボールで壁にめり込んだ。加減しないと崩壊しかねない。


「命名…タピオカボールでいっか。」


 その言葉と同時に、るきはボールを上に投げた。次の瞬間。ボールはタピオカのようなサイズの球状の黒い何かに変化。四方八方へと飛び散った。それは皆に何度もヒットし、数十秒で元のボールに戻った。


「エグいな皆。」

「永遠もね。」


 俺が感心しているとクチナシにツッコミを入れられた。だが俺は特になにかした覚えはない。いていうならにんじんにクチナシ投げとけって言ったくらいだろう。そうクチナシと話している間にも第二試合はカオスに進んでいく。一つだったはずのボールが何十個も飛び交い、ボールが炎を纏い、氷壁でボールを受け止め、最早人ではない動きで回避する。気づけば二試合目を開始して三十分が経っていた。


「よし、そろそろ終わりだ!皆休めー!」


 俺の一言で全員が休憩に入る。もう昼だな。カオスドッジをしている間に想像以上の時間が経過していた。


「とわにぃ、ここって食堂とか無いの?ご飯皆で食べたい。」

「あぁ、あるぞ。じゃあ今日はそっちで食べるか。クチナシ、案内頼んだ。俺は少し部屋に用事があるから。」

「わかった。」


 りめあの言う通り、たまには皆で食べるほうが良いだろう。まだ初日だけど。俺はそう思いながら部屋に向かった。

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