第10話 写像

 八月ももう中盤。

 俺は未来とのある約束を果たすために、地元の駅前に来ている。

 というのも、未来とこの前、中村グループの貸し切り旅館に泊まった旅行の時、「咲の写真を見せる」という約束をしたのだ。

 だから未来を駅前に呼び出し、俺の家にご招待しようと思ったのだが……。

「なあ、なんか人多いんだか」

 俺は頭を抱えながら、この状況を理解しようとする。

 目の前には未来と薫、そして若葉と蜜柑。

「別にいいじゃないか、僕たちがいても」

「お前はまだ分かるぞ。未来の彼氏だもんな」

 俺はそう言ってから、若葉と蜜柑に目線を向ける。

「だって、未来ちゃんが面白そうだからきてって」

「言ったんですよね? 若葉ちゃん?」

 と二人は、顔を合わせニコニコで答えてくる。

「未来お前なぁ……」

「仕方ないじゃん、誰にも言うなよって言われてないもん」

「くっ……」

 確かに、未来の言う通り、別に誰にも言うなとは言ってなかった。

「わかったわかった、うちの母さんが飯を作ってたらしいんだけど、てっきり未来しか来ないもんだと思ってたから、量足りないかもだけど、それでもいいか?」

 そう、うちの母が「進が女の子連れてくるって! 天変地異! ついにまたモテ期到来ね!」と言ったっきり、その女の子が彼氏持ちとも知らずに、張り切りまくっておもてなしをしようとしているのだ。

「「はーい! へーきでーす!」」

「あ、でーす!」 

 と返事をする、未来と蜜柑と若葉に続いて、薫も遅れて元気に返事をした。

 そして俺たちは、張り切りまくっている母のいる家に向かうのであった。


 俺の家は、駅から歩いて約二十分。

 川沿いの緑が茂る小道を、まっすぐ歩けばいつの間にか家についている。

 春には桜が咲いてとてもきれいで、秋には紅葉、冬にはたまに雪が積もり、銀世界になったりと、とても趣が深い。

 そして我が家に到着。

 家は一軒家で、少し地味だが、目立つこともなく、俺はすごい気に入っている。

 俺はインターホンを押すと、そこから返事もせずに、間髪も入れずに玄関のドアが開いた。

 俺に似て、高い身長の女性。

 これが俺の母である。

「あらこんにちは! 進から連絡はあったけれど、まさかこんなにたくさんとはね~! わたしうれしい!」

 母は、元気よく飛び出し、俺の後ろにいるメンバーの顔をまじまじと見る。

 というかこの母、玄関で待ち伏せてやがったな……。

 改めて、俺も後ろのメンバーを見ると、若葉が俺を向いていた。

 ……ん? 口をパクパクさせてる? なになに……。

 ゆ・か・い・な・ま・ま・だ・ね。

 ……そうですね。

 なんだろう。

 最近、若葉の俺に対しての当たりが、強くなっているような……。

 まあ脳裏によぎるのは、黛と弥生なんだが……今はまあいいか。

 若葉に気が付かれた恥ずかしさから、俺は家に歩みを進め、さっさと家に入ろうと言おうとすると、母はピタッと未来の前で止まった。

 母は、未来に近づくと、少し未来の前髪を流し、顔を両手で抑えて、目や鼻をまじまじと見る。

「えっ! ……いやその……近いですよ……お母さん……」

 未来は、少し恥ずかしそうにしながら目を背ける。

 俺は、失礼に値する行為だと感じたので、未来の顔を見ていて、俺に背中を向けている母の肩をグイっと引き、

「おい! いきなり来たお客さんにあんまりだろ! はずかしいからやめてく……れ?」

 と言いながら、母をこちらに向かせた。

 すると母は、ぽろぽろと涙を流していた。

「え……」

 困惑である。

 もしかして、うちの母は情緒不安定なだろうか……。

 母は少ししてから涙を拭き、みんなに謝った。

「ごめんなさいね。少し昔仲良かった友達の子供のこと思い出しちゃった。足止めしてごめんなさいね。ほら上がってって」

 と母は、みんなを中に誘導した。

 みんなが入っていく中、俺は少し考えた。

 やはり未来には、咲の面影がある。

 母もそれを感じ取ったのではないか?

 俺は考え込んでいると、母が話しかけてきた。

「ほら、進も入りなさい」

 ……せっかくだし聞いてみるか。

「なあ、未来ってやっぱり……」

 母は少しびっくりしたようにしてから、俺の問いに答えた。

「そうだね、似てるね。でも名前も性格も違うでしょ?」

「……」

「あきらめちゃったの後悔してるの?」

 母が言っているのは、咲を諦めたことについてだ。

 ……している。

 後悔しているのは自明である。

 でも会えなかったってことは……。

 向こうが会いたくないって、思っているからかもしれない。

 俺は、そう思っている。

「後悔してるさ。でも会えなかったのは向こうが会いたくないって思ってるからだと、俺は思ってる。一年間は自分勝手に追わせてもらったけど、きっと迷惑だったと思うからもう追わないさ。何かに熱中してると、友達も増えないし、こうやって友達を家に呼ぶこともなかったさ。だから後悔してるけど、これでいいよ」

 俺がそう言うと、母はゆっくり頷いた。

 それを確認すると、俺は家に入った。


 家に入り俺は、まず二階の自分の部屋に案内した。

 ……こんな人数になるとは思わなかったので、ちょいと狭いが……俺の部屋はシングルベッドが置いてあり、その四倍ほどの大きさが、俺の部屋の大きさだ。

 服を入れるクローゼットがあり、いろいろな本などが入っている棚があり、その上にはバスケ部時代のリストバンドやボールが置いてある。

 さてと……思い出に浸ってないで、お茶菓子を持ってくるかな……。

「あれ? エロ本とかないんですか?」

「割と普通の部屋だね。あ、ボールだ」

「へーアンタこんな服もってるのね。いいじゃんセンス」

「あ、なあ進、この鏡にタオル掛けてもいいか? 鏡はどうも苦手でな……」

 ……阿鼻叫喚である。

 皆、部屋に入って五秒でやりたい放題している。

 蜜柑は、ベッドの下に潜り込みエロ本のチェックをしてる。

「なあ蜜柑。時代はデジタルだぞ。部屋にエロ本など存在しないぞ」

「むう……私はありますよ、インテリアにどうですか!」

「いらん」

「はは、そうですか」

「まったく……おとなしくしとけよ」

 ふう……次は若葉だな。

「くるくるー」

 若葉は、床にあったボールを回していた。

 さすがの運動神経である。

 指の先で、かなり長い間回っている。

 集中しているようで、一生懸命だった。

 まったく、若葉はかわいいなぁ!

「……あ」

 そう若葉が言った次の瞬間、若葉の指からボールが離れ、開いていたドアからボールが外に出る。

「待ってー」

 若葉は、そのままドアの外に出て、ボールを追いかける。

 ……少ししてから「あー! お母さん!」と若葉の大きな声がしてから、どんどんどんと大きな音を立てて、ボールが階段を跳ねながら落ちていく音が家に鳴り響いた。

 そして次の瞬間、「ぷぎゃ!」「わあ! ごめんなさあーい!」と母の断末魔と若葉の叫びが聞こえた後に、パリーンという音がした。

 ……まあ、いいか……。

「それで……薫は何だっけ?」

 薫は、部屋の端っこで立って待っていた。

「えーと……鏡をふさいでほしいんだ。見えなくなれば、なんでもいいんだが……」

 と薫は、鏡を指差してそう言った

 って鏡を塞ぐってなんだよ……。

「おっけー、壁に向ければいいな?」

「うん。ありがと」

 鏡を壁に向けると、安心したような表情をした薫は、未来の隣に行き、俺の服を物色し始めた。

 チラッと棚の奥の奥にある、未開封の線香花火セットが目に入った。


 俺は、そのあと下の階でお茶菓子を準備して、未来に見せるための中学のアルバムといくつかの中学の頃の写真を持ち、俺の部屋に向かった。

「おーい、持ってきたぞ中学の頃のアルバムといろいろ」

「「待ってました!!」」

 三人はそろって言うと、速攻で集合して、半円を作る様に部屋の中央に正座した。

 俺は、アルバムを広げペラペラと広げ始めた。

 実は俺も、女子にいじめられていた咲に手を差し伸べたせいで、少しばかり女子生徒には嫌われていたのだが、中学男子は基本的に馬鹿……純粋だから、構わず仲良くしてくれたんだよな……。

 いくつも俺と、クラスメイトの男たちと映っている写真が、アルバムに載っている。

 かくいう女子たち(と薫)は、それぞれ自分の欲望のままにアルバムを見ている。

「あ! この男の子かわいい! 進さん紹介してください!」

 と蜜柑は言う。指差しているのは、確か二年の時クラスが一緒だった高草木だが……実は咲を探している間は、友達の誘いを全部断っていたから、下手したら中学の友達との関係は全滅しているってことも……そういや中学の頃の友達からの連絡はもう一切ないような……。

「すまん……そいつそんな仲良くなかった」

 俺は、ちょっとした嘘をつく。

「ええー! しょんぼり……」

「お前ショタだったらなんでもいいのか?」

「いえ! 可愛ければなんでもOKです!」

「もっとストライクゾーン広いのな……」

「おー、この男の子二人組、右が受けに見せかけての攻めで、左が受けですね! インテリとヤンキーの典型的なやつの!」

「俺の知り合いでBLカップリング作んな! 次会ったとき気まずくなるだろ」

 はあ……ほんと、顔がいいだけの女である。

 こんな奴が、学園のレディプリンスでよいのだろうか。

 次に、若葉に目を向けると、どうやら修学旅行の写真にくぎ付けであった。

 これらの写真は、母が選び抜いて買ってくれたもので、俺が映ってるものがほとんどだ。

 もしかすると、中学の頃の俺に興味深々なのか……?

 そう思い俺は、若葉の視点の先をさらによく見る。

 すると俺ではなく、奥の女の子たちの服をまじまじと見ているようだった。

「……なあ若葉」

「なに」

「なんで俺じゃなくて、後ろの女の子の服を見てるんだ?」

「参考にする。黛にウケがいい服を探してるの」

 ……中野若葉。黛のためにここまで必死になっているとは……恐るべし。

「んで、どっちが黛にウケがいいと思う?」

 そう言うと若葉は、俺に二つの写真を見せてきた。

 片方は、俺と友達がピースしてる写真であり、その後ろにめちゃくちゃぼやけて、少し地味目な女の子が映っている。

 もう片方の写真には、通り過ぎようとしている俺が映っていて……空いたスペースの右側に、きゃぴきゃぴしてそうな女の子たちの集団がおそろいの服を着ている。

 恐らく修学旅行に合わせて、服装をそろえたのだろう。

 うーん……黛は結局オタクだから……派手な服装は嫌いそうだな……。

「……地味な方かな。黛はそっちの方が好きそう」

「おっけー。写真撮っておこ」

「お前写真を写真として保存すんな……しかも元がぼやけてんのに、さらにひどいことになってるぞ……」

 若葉が撮った写真は、もうぼやけて色しか確認できないほどになっている。

「大丈夫。家で何とか加工して参考にする」

 どや顔で答える若葉。

「お前のその熱量はどこから来るんだ……」

 ……でも、ここまで黛を惚れさせようと頑張っているんだよな……。

 そんなわちゃわちゃしてるこいつらを見てて、今も幸せだが、俺も、もう少し咲を追っていたらどうなっていたのかが、少し気になったりもする。

 今となっては、こいつらと楽しく遊べて幸せだけど、もし俺だけ幸せになってたらと思うと、罪悪感がすごい。

 そのまま皆で、写真を見ていると、未来が咲の写真に、やっと目を付けた。

 俺からこれが咲だぞ、と言ってやってもよかったのだが、本人に気が付いてもらいたかったのである。

「進。たぶんこれかな。咲ちゃんってのは……私に少し似てると思うんだけど……」

 未来は、俺に聞きながら写真を見せてきた。

「……そうだ」

 そこに映っていたのは、咲と俺の2ショット。

 正面をちゃんと向き、俺は元気よさそうに、咲は恥ずかしそうにピースサインをしている。

 ショートカットだが少し前髪が長く、茶髪交じりで内気そうな雰囲気。

 まさしく咲である。

「……に、似てるかな……」

 未来は、少し顔をゆがめた。

 確かに未来は、金髪でウェーブのかかった一つ結びをしているし、チア部に入るくらい活発である。

 正反対といってもいいだろう。

 しかし、口の形や輪郭が似ているのだ。

「うーんと……ああ、確かに似ているぞ! 口と輪郭がそっくりだ!」

 薫が言う。

「そうかな……えーとカメラカメラ……」

 未来は、カメラで自分と写真を比べようと携帯を取り出した。

 薫はすぐさま後退し、そのほかの蜜柑や若葉や俺は、改めて未来と咲を比べようと携帯をのぞき込む。

「ああでも……」

 未来は少し角度を変えたりして、咲と自分を比べてみている。

「似てますね。ほんとに」

 蜜柑も感心しているようだった。

「進が未来ちゃんに見てほしいって気持ちもわかるかも」

 若葉は、俺を向きながら言った。

「だろ? やっぱり俺の言っていることは間違いじゃなかったんだ」

 何とか、咲と未来が似ていることを証明出来て、安心しているのもつかの間。

「んで、進さんと咲さんのご関係は?」

 と蜜柑が聞いてきた。

「げ」

 来たか。この質問。

「…なんでもいーだろ」

「「よくない!」」

 と女子四人…じゃなかった。

 女子三人と男子一人に言い寄られる。

 やっぱり女の子は、恋バナが大好きである。

「えっとー」

「「うんうん」」

「なんていうかー」

「「うん」」

「好きっちゃ好きだったというか―付き合ってたというかー」

「「うんうん」」

「でもそうでもないようなー」

「「つまんな」」

 ……四対一。

 圧倒的戦力差である。

 しかも、ここには技術的格差もない。

 かつての長篠の戦いのように、鉄炮を使って大勝というわけにもいかないのである。

「嘘です! 初恋でした! 付き合ってました!」

 俺は、腹をくくり咲が初恋だということを告白した。

「やっぱり! ねえねえどこが好きだったの? 顔? 性格?」

 と未来

「進。いつどうやって好きになったのか教えて、あとどうやって告白したかも」

 と若葉。

「はいはい! えっっっっっっっはしたんですか!!」

 と蜜柑おじさん。

「初恋かぁ……」

 と反応が一番清楚な執事くん。

 俺は、こいつらの質問攻めに小一時間ほど物量攻めにされてしまった。



 そして物量質問攻めが終わった後、アルバムやらを下の階で片付けたあと、俺の部屋の戻ると、俺の部屋の壁にもたれて、薫と若葉は仲良く眠ってしまっていた。

「……何で寝てるんだ……」

「しーっ。なんだかこの部屋に来てから、薫くん気を張ってたみたいで……若葉ちゃんが気づいて、若葉ちゃんとのんびり話してたら緊張が切れたみたいで寝ちゃって……若葉ちゃんもつられて……」

 と未来は笑顔で言う。

「つーか、いいのかよ。めちゃくちゃ肩合わせてるけど」

 若葉と薫は、仲がよさそうに肩を合わせて寝ている。

 未来は嫉妬の一つでもしそうだが……。

「いいの。なんかそういうのじゃないってわかるし、二人とも趣味も共通してるから、友達みたいなものでしょ?」

「……お前がそうならいいか」

 確かに、いままで薫と若葉の関係を見ていると、仲の良い兄弟を見ているような感覚になる。

 恋人の仲というより、遊び友達だろうか。

「というか……可愛すぎですね……写真の一つでも取っちゃいたいぐらいです……ぐへへ」

 オタク全開絶好調の蜜柑が、携帯を取り出し、二人に向ける。

「ああ……おい……悪用はすんなよ……」

 本当にどうしようもない女だ……。

 と思っていると、蜜柑がカメラを切った。

 その瞬間に、薫は目を覚ました。

 薫は、後ろに壁があるにも関わらず、後ずさりし、両手で顔を隠した。

「中村様……申し訳ないですが……僕に向けている携帯を下げていただけませんか……?」

 薫は、か細い声で言った。

 本当に怯えているようで、逃げようにも力が入っていない様子だった。

「ええ……いいですよ……すみません……」

 蜜柑は、すぐさま携帯をしまった。

 薫はグロッキーになってしまったようで、顔が青ざめていた。

 俺は、今日の薫の行動を思い出した。

 鏡をふさいでほしいと言ったり、カメラを向けられたり、内カメラで自分の顔が映りかけると、さっと身を引いたりと、自分の顔を見るのを極端に恐れているような行動をとっていたような……。

 聞いてみようとしたが、薫に話しかけられるような雰囲気ではなかった。

 少し陰鬱な雰囲気が流れていたが、ふわっと薫の膝に、寝ている若葉が倒れこんだ。

 薫に膝枕されている、すやすや寝ている若葉は、それはもう天使のようにかわいく、純粋だった。

 いやまじで可愛いや。

 それを見た薫は、そんな若葉を見て安心したのか、一呼吸置いた後、

「取り乱してすみません。もう、問題ありませんので」

 とだけ言って、薫は優しく若葉の前髪を整えた。

 薫は元通り、穏やかな表情に戻っていた。

 ……恐らく、今の一連の動作も、薫の過去に何かあったからなのだろうが……今はまだ、俺が知らなくていいような気がする。

 知っていそうな弥生も、全く教えてはくれないし、やっぱりいつか薫の口から話してもらう時を待つ方が正解だろう。

 すると、突然下からだんだんだんと駆け上がってくるような音がして、

「進くんとそれからガールズたち!」

 と俺の母が大声で言った後、寝ている若葉を見た後、

「改めて、ご飯あるから、食べていってちょうだい……若葉ちゃんが起きてからでいいからね……」

 と小声で、みんなにご飯があることを促した。

 息子として、母が最低限の気遣いはできるようで、安心したことは言うまでもないであろう。

 みんなが頷いて静かに返事をすると、若葉が起きてヌルっと立ち上がり、目を擦りながら扉に一直線に歩き、

「ご飯……ご飯」

 と母の横を通り抜けていった。

 少しすると母が、俺たちのほうを向いて、

「あれが夢遊ってやつなの……?」

 と言った。

 さあ……寝ぼけてるだけだろ……。

 みんなは、少しびっくりしていて思考が停止していたが、

「ま、まあ……せっかくだし食べていこうか……」

 という薫の一声でみんな正気を取り戻し、下の階で食卓を囲み、仲良くご飯を食べた。

 言うまでもなく、若葉は夢遊病ではなく、ただの食いしん坊だったようで、俺の食べる量の軽く三倍は多く食べていた。

 

 そして皆が帰った後、自分の部屋を見てみると、薫が座っていたと思われるところには、汗と思われる跡が少しだけ残っていた。

 ……どれだけ緊張していたのか……そして、どうしてそんなにも薫は緊張していたのか。

 この時の俺には、わかるはずもなかった。


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