十八話【仲間】
目の前に現れる大きなカブトムシ!
胸部の背から伸びた巨大な角に、頭部から突き出た小さ目のツノ。
カニの鋏の様なヘラクレスオオカブトだった!
「私が出る!」
銀色に輝く杖を掲げ、白いローブ姿に映える黒髪褐色のダークエルフ!
そのスワロの後を追う様に前に出るピノ!
顔が半分隠れるほどフードを目深に被り、失った耳を隠す兎の獣人。
未だ惣一郎をガン無視するピノだが、慕うスワロの為に異世界にまでやって来た、今やジビカガイライの大魔導士だ!
辛い過去を乗り越え、強く生きるピノ!
嫌々ではあったが、惣一郎との契約で魔力も以前とは比べ物にならない。
スワロの神々しい光剣の形を真似、光剣の幅を広げるピノは、きっと向こうで一番の魔導士になるだろう!
惚けたベンゾウに天然の弁慶、しっかり者のセシルと一歩引いた冷めた目線のピノ。
ジビカガイライもきっと、良いチームになる事だろう。
そのセシルも後方から支援魔法で上手く戦闘を手助けしている。
聖女として生き方を見失ったセシル。
彼女のオリジナルの回復魔法は、他に類を見ないレア中のレアだ!
セシルの後方支援は接近戦を得意とするベンゾウと弁慶にとって、大きな助けになる。
世間知らずだったあの頃とは見違える程、大人の女性になって……
惣一郎に擦り寄るクロ。
「見違えたろう惣一郎。セシルもピノも我が育てた娘だ」
「ああ、本当見違えたよ」
クロの頭を撫でる惣一郎。
荷車を引かせる目的で仲間にした犬神。
まさか聖獣で世界と繋がる傍観者になるとは……
「クロ。みんなの事、頼むぞ!」
「良かろう、お主に代わり最後まで見守ろう」
「次や!」
新たに現れる、大きな黒い蠍。
大きなハサミに反り返る毒針の付いた尻尾。
6本脚とは別に盾の様に正面を守るハサミが2本。
向こうでは6本脚じゃ無いと厄災じゃ無いとされるが、蟲は蟲。
節足動物で蜘蛛に近いが、地球の常識を異世界に持ち込んでも始まらない。
「先に行こう!」
惣一郎の肩を叩き、ツナマヨが前に出る。
元冒険者チーム、ゴリラング・ログの団長。
ダンジョンで手に入れたスキル剣豪を持て余し、惣一郎の刀で開花した熟女。
長年女で一つ冒険者をやって来ただけあって、貫禄漂う猛者中の猛者である。
今じゃ冒険者を引退し、ギルドで活躍しているそうだが、まだまだ現役である。
ギルドのトップ五賢人に気に入られ、エリア担当まで上り詰めたそうだが、年の割にまだまだ鉄火場が好きな様だ……
ダイオウサソリの攻撃をいなし、居合斬りで手足を削るツナマヨ。
彼女がいればギルドも安泰だろう……
その間にも次々と、御神体から生み出されて行く蟲。
惣一郎も盾と無数の槍を出し、日本刀に円盤を浮かべ、戦闘体制に入る。
「行くか。ベンゾウ、弁慶!」
「うん!」
「ああ旦那様!」
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