十六話【爪痕】
対象的な表情の二つの首を見つめるベンゾウ。
すると二つの少女の頭が火柱を上げ燃え上がる!
「終わった様だな」
追いかけて来たスワロとツナマヨであった。
杖を下ろすスワロがベンゾウの横に並び、燃える少女の頭を見下ろす。
赤い目が溶ける様に動き、涙の様に流れ出る。
「子供だったのだ。子供が遊びたくて仲間を増やし、戦争の真似事でもしたかったのだろう……」
スワロの目は優しそうに、2人の少女に注がれていた。
「それも魔女の心の一つ?」
「分からん…… さぁ、戻ろう! 主人が最後の大仕事を控えておる!」
4人が来たツリーハウスへと帰っていく。
すると弁慶がふと、疑問を口にする。
「この木はこのままでいいのか?」
「後で騎士達が回収すると言っておったが…… その騎士達は上手くやっておるのだろうか?」
首を傾げる4人。
ツナマヨが騎士達を心配する……
「ハァハァ、毒はこれが最後です!」
息を切らすハク。
次々と孵化する蟲を、休む暇なく倒して行く騎士のみんな。
「ハァハァ、孵化したばかりで助かったな」
「ああ、ハァハァ。見ろあれ! ミコ様だけでほとんど倒して行くぞ」
回転しながら除雪車の様に、次々と倒して行くミコ。
「ハァハァ、見てないで、手を動かせ!」
ハンマーで蟲の頭を叩き割るゴゴ。
ホルスタインも新しい武器に魅入られた様に斬り刻んで行く。
「あのふたりには近付かん方がいいな……」
コクンっとジャニーが頷く。
ミコの応援もあって無数にいた蟲は、然程時間もかからず、動くのはいなくなっていた。
「タイガ! 入れ物だったデカい蟲の目は潰しておけ!」
最後の卵から薙刀を抜くギネアが声を上げる。
回転が止まるとフラフラとバランスを崩すミコ。
支えるガオが、帰ろうと吠える。
村の扉から戻ってくる面々。
ほぼ同じタイミングであった。
疲れきった騎士達の姿に、ホッとするツナマヨ。
その隣でベンゾウが叫ぶ!
「ご主人様!!」
苦しそうに手を突く惣一郎!
ドラミ達も為す術もなく、見てる事しか出来ずにいた。
「旦那様! どうしたのだ!」
「それが急に苦しみ出して! ミネアさんが今、回復薬を取りに」
慌てるセシル。
村人達も心配そうに囲んでいた。
「御神体の脚が揃ったんや! 魔女の意思が抜けて寄生してた蟲が騒ぎ出したんや!」
「寄生してた! どう言う事だ! 主人は寄生されてたのか!」
「私のせいなんです!」
回復薬を手に戻って来たミネア。
ネネルが死んだ事で、蟲本来の生存サイクルに戻ったのだろう。
惣一郎の意思とは関係なく、孵化しようとする寄生蟲にギリギリ耐えている状態であった。
「ベンゾウ…… 俺の、俺の目を斬れ!」
苦しそうに顔を上げる惣一郎の目が、赤くなっていた!
「ご主人様!」
惣一郎のその姿に、その場に居た全員が固まる!
「あかん! 孵化しよった!」
「旦那様!」
「惣一郎様!」
皆が惣一郎を囲み、声を上げる。
「早く…… ベンゾウ……」
「そ、そんな…… 無理だよ…… 出来ないよ!」
「奴隷契約もある! ベンゾウには無理や!」
するとツナマヨがキューテッドを呼び、契約を解除しろと、声を荒げる!
キューテッドが慌てて、ツナマヨと惣一郎との契約解除を履行すると、腰を落とすツナマヨの手がブレる様に消える!
シュン!っと遅れて音を立てる日本刀が現れる!
手を突く惣一郎の前に、斬られた赤い眼球が2つ、地面に落ちていた……
「ご主人様!」
「旦那様!」
「主人よ!」
みんなの声が惣一郎に届く!
「大丈夫だ…… 危なかった……」
両目を失い血を流す惣一郎に、ミネアが回復薬を飲ませる。
痛みが引いて行く……
声を失うみんなが見守る。
「大丈夫だ。俺にはサーチがあるから問題ない」
実際サーチを唱えると、今まで見ていた景色と遜色なく、いやむしろ良く見えていた。
ずっとこのままという訳にはいかないが……
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