十四話【浮気の境界戦】
「どうしたのだ、スワロ殿!」
杖で魔法を使わず、鎧の騎士をぶっ叩くスワロ。
周りの3人の傭兵は、ツナマヨに寝込みを襲われ、正座し並んでいた。
「いや、なんか急に怒りが湧いてきて……」
赤い目の鎧の男は蟲と混ざってはおらず、早朝の襲撃になす術も無くあっさりと、ツナマヨ達に捕まっていた。
正座する3人に刀を向けるツナマヨ。
「動くな!」
ヒィーーー
地面に這いつくばる鎧の男。
「己れ…… 妾をコケにするか!」
ゴツい男に相応しくない声で、スワロを睨む。
そのスワロが声を荒げる。
「ここで何をしようとしてたのか言え!」
「隷属が解けたら随分と勇ましいな、我が憑代よ」
スワロの周りに青白く輝く光剣がいくつも現れる。
「死にたいのか!」
地面に手を突く鎧の男に杖を向け、スワロが詰め寄る次の瞬間!
チン……
っと、いつの間にか横に居たツナマヨが刀を鞘に収める。
「遊ぶなスワロ殿。まだ他にもいるのだぞ」
手柄が欲しく時間をかけすぎたスワロを戒めるツナマヨ。
鎧の男は目を押さえて叫び出す。
地面には緑のリングが脈打つ赤い眼球が二つ落ちていた。
「す、済まぬ……」
「謝る必要は無い。応援に戻るぞ!」
言葉を失う3人の傭兵に、のたうち回る鎧の男。
スワロは冷静を取り戻し、地面に落ちた眼球に炎槍を突き立てる。
「ああ〜ぁ。また私が減っちゃった…… 隠してたのに、何で……」
キシルの背後でネネルがぼやく。
キシルも感じたのか怒りが顔に現れると、次第に目が赤くなる。
「大丈夫。ネネルは私が守るわ」
庇うキシルの身体が徐々に大きく膨らみ、異形な姿へと変わっていく。
服を引き裂き現れる黒い六肢。
腕だろう前脚はゲルドマに似た、瓢箪型の硬そうな手だった。
刺々しい脚は長く伸び、カマキリの様に4本の脚で立ち、腹部は後ろに長く反りかえる。
戦斧を構える弁慶。
ベンゾウの手にもいつの間にか、黒い小刀が握られていた。
村に戻るミコ達。
離れた場所に出来た見覚えの無い、枝が重なり合う檻に驚く。
「旦那!」
近付くミコをドラミが止める!
「今近付いたらあかん! こっちは惣一郎に任せて、予定通りゴゴ達の応援に行きや」
心配そうに覗き込むミコ。
「私はお姉様の所へ向かう!」と、惣一郎に見向きもしないピノは、スワロ達が入った扉へと向かう。
「ここは我が残る。其方らは次に向かうのだ」
クロがセシルに寄り添い、甘える様に頭を擦り付け、ミコ達に言う。
疲れた様だ……
「ここはドラミさんも私もいます。ミコさんは次に向かってください」
っと、クロの頭を撫でるセシル。
「分かった…… 行くぞガオ!」
「ガオ!」
檻の中では、真っ赤な顔で口付けをする惣一郎とミネアの姿があった。
精霊の指示通り、恥ずかしそうに唇を重ねるふたり。
だが直ぐに、惣一郎の顔色が曇る!
入った……
感じるぞ……
心窩部に熱い物を感じる惣一郎。
離れようとするが、ミネアの腕に力が入る。
「ちょ、もう大丈夫だ…… ミネア!」
ハッ!と正気に戻るミネアがさらに赤くなると、見守っていたドラミが声をかける。
「どや…… 上手く行ったんか?」
「ああ、上手く取り込めた様だ……」
無事ミネアを無傷で救ったが、問題はこの後どうするか、相変わらず行き当たりばったりな惣一郎であった。
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