十三話【恋は盲目】

扉を潜る勇者の村の騎士団。


目の前でじっと動かない、大きな緑色の蟲に盾を構えるゴゴとジジ。


「訓練の成果を見せるぞ!」


寝ているのか、巨大な葉っぱの様な体に刺々しい脚を伸ばし、大木に寄りかかる様に動かない。


タイガが槍を構えゴゴの前に出ると、太い棘の付いた脚をツンと突く。


のっぺりした顔に生える触覚が、微かに動く。


「生きてるみたいだな……」


「ああ、ハク! 毒を頼む」


ゴゴの指示で杖を構えるハクの前に、他の騎士たちが惣一郎から預かった殺虫剤を、地面に山盛りにして行く。


空気がハクの前に集まりだし、殺虫剤を巻き上げ、白い球体が出来ていく。


杖に操られる空気の球が、ふわふわと眠る蟲の顔の前まで飛ぶと、ふわっと毒を巻き上げ弾けずに消える!


蟲に降り注ぐ殺虫剤。


ハクの操気弾もバリエーションが増えていた。


見守る騎士団とギネア。


空は明るくなり、陽の光りが蟲に射しだす。








「恋がしたいってどう言う意味だ?」


「そそそのまんまさ。れれ恋愛の事だよ」


真っ赤な顔でうずくまるミネアが、恥ずかしそうに言葉を溢す。


「そんなはっきりと言わなくても……」


そんなミネアを面白がってか、精霊がニヤニヤと話を続ける。


「きき寄生すると言っても、かかか彼女の感情の切れ端を分ける様な物なのさ。たまたまこの子には恋がしたいって言う想いが、ややや宿ったんだと思う。いや呼んだのかな?」


「もう、やめて!」 ニヤニヤ


「やや宿ったのがいつかは分からないが、ここの子自身、すでに恋をしてたのが幸いし、かか彼女のたた卵も孵る事なく宿っているのさ」


「もう殺して〜」 ニヤニヤ


首を傾げる惣一郎。


「じゃこのままでも魔女に乗っ取られる事は無いのか?」


ミネア本人も気付いてはいなかったのだろう。


「卵が孵化する事は無いけど、彼女が最後の1人になれば、分散した感情の全てがこの子に宿る事になるし、このままでも居場所ぐらいはバレるかな?」


「寄生した魔女を取り出すにはどうすればいいんだ?」


「惣一郎様! 私は構いません! このままその手に……」


背中を向けたまま覚悟を語るミネア。


孵化してない魔女の卵が他と繋がっているのだとしたら、このままにはしておけない。


「ん〜 ほほ他に憑代がいれば、移動させる事ぐらいなら、ででで出来ると思うよ…… ただし」


ただし?


「ふふふ孵化させたくないなら同じ、こここ恋をしてる憑代だね」


恋か……


ベンゾウ、弁慶、スワロ、ツナマヨ、宿家の女将、ギルドのお姉様、魔導所店の魔女様…… 人妻のミトルさん……


俺で行けるかな?






その頃、近くの森で野営していた旅の一行が出発の準備をする中、2人のダークエルフを前に向き合うベンゾウと弁慶。


「なぜここが…… 勇者!」


ネネルを庇う様に前に出るキシル。


ベンゾウと弁慶は虫の知らせか惣一郎に……


『『 なんかムカつく! 』』







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