四話【転移屋本店】
訓練の声が響くユグポンの村。
ハクとホルスタインの悲鳴が子供達を泣かせる。
「あれ大丈夫か?」
出かける準備を整える惣一郎が、近くにいたメイド姿のマーガレットに声をかける。
「何でもツナマヨ様が、いっそう気合いの入った訓練をされてるとかで……」
ほどほどにお願いします……
このままユグポンの中にいても、キシルとネネルが現れないと惣一郎とスワロ、ベンゾウと弁慶の4人は、ビルナットから少し離れた[ゴーマユ]という街に向かう事にした。
東に位置するゴーマユの街は、転移屋の本社と呼べる組織があり、各地に転移しやすいとの情報から動きやすい様に、ユグポンを移動しておく為である。
すでに準備を終えた惣一郎だが、弁慶だけが白いローブではないと駄々を捏ね始め、サイズもないことから今、急ピッチでドワーフ達が服のお直しを急かされていた。
「だから留守番してればいいのに……」
「冷たい事言うなベンゾウ! アタイも同じ格好で旦那様と歩きたいんだ!」
やれやれ……
そこにドラミが現れる。
「惣一郎、また種が出来たで! 3つや」
「おお! 早かったな」
「人も増えたからな、魔力が豊富なんやろ。ユグポンもなんや張り切ってる感じや」
言葉は話さないが、ユグポンも仲間として役に立ちたいのだろう。
「これでまた移動も楽になるな! 大陸にいるトトリの所に、一つ使っちゃってるから助かるよ」
すると丁度出来たとドワーフのカンが、弁慶のローブを持ってやって来る。
「じゃドラミ、行ってくる。後よろしくな」
「せや惣一郎、水が沢山ある場所調べとってくれんか。 精霊のひとり[ウンディーネ]を呼び出す為や」
「ああ、分かった」
ツリーハウスを出て、種にしたユグポンを仕舞う惣一郎。
人が少しづつ戻りつつある、ビルナットの転移屋へと向かう。
呼び出す精霊は確か……
水のウンディーネと土のノーム……
それと火のイフリートと風のシルフだったか?
木のドライアドリスも五大精霊のひとりらしいが、ハーフになったドラミで事足りるとの事。
急にメルヘンチックになった世界観に、ワクワクする惣一郎であった。
同じ白いローブ姿に嬉しそうな弁慶を連れ、転移屋から転移を2回すると、大きな街ゴーマユに着く。
今まで見た事もない大きな施設に口が開く惣一郎。
三階まで吹き抜けのロビーに沢山のドアが並んでいた。
「おお、その出で立ちは勇者様!」
広い施設にしては、まばらの人影。
その中のひとり、施設職員だろうネコが話しかけてくる。
「ええ、何時も利用させてもらって助かってますよ!」
「いえいえ、当たり前の事です。蟲を倒して下さる勇者様のお力になれるのですから! 今回はどちらまで?」
「いえ、蟲の情報が入った時に動きやすい様に、ゴーマユに拠点を置こうかと思いまして」
「宿をお探しですか?」
「いえ、ツリーハウスがあるので、外の森にでもと……」
「それでは急ぎの時不便でしょう! 良かったらこの施設内に中庭がありますので、そちらをご利用下さい。施設も24時間開いておりますので」
確かに移動はその方が楽だと、惣一郎はネコの提案をありがたく受ける。
案内された二階の中庭。
見た目いい樹々と花壇、噴水まであるそこそこ広い庭であった。
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