五話【精霊召喚】

中庭にユグポンを出す惣一郎。


案内するネコについでに、近くに湖はないかと尋ねると、十二番の扉で行けるセイブラという町が湖の近くだと言う。


「セイブラか、後で行ってみるか……」


チョンチョン。


ベンゾウが後ろから袖を引っ張る。


振り返るとベンゾウが中庭の噴水を指差す。


「何よ……」


「水あるよ」


はぁ?


いやいや、あるけども……


精霊を呼び出すのよ? 


いくら何でも、これでいいなら風呂でいいだろって話よ!


ユグポンからドラミが出てきて、


「何や早かったな! 十分やろ」


おいおい……


「これでいいなら風呂でいいだろ!」


「ありゃ水じゃなくってお湯やろが」


………





ネコのいる前で隠す訳でもなく、精霊を呼び始めるドラミ。


えっ? いきなり?


もっと厳かに締めやかにしめやかに執り行なう物ではないのかい?


惣一郎の期待を裏切り、いきなり始まった精霊召喚。


ドラミの周りを魔法陣が広がり、祝詞の様な呪文を唱え始める。


中庭の噴水の水が光り、水の貴婦人ウンディーネが姿を現す!


感動もクソもなかった……


「妾を呼び出すとは、一体なんの用かえ?」


水で出来た透明な貴婦人。


ドラミが事情を説明し、来る時に協力を求める。


「妾の力を借りたくば、それ相応の褒美を所望するぞえ」


所望するそうです……


噴水で繰り広げるファンタジーに、転移屋を利用する旅人も足を止め、離れて人集りが出来ていく。


「惣一郎、褒美やて! 考えてなかったわ! どないする?」


弁慶が「やはり金だろう?」


スワロが「いや、相手は精霊。生贄とか?」


ベンゾウが「お肉?」


ドラミが「あかん帰ってまうで! 惣一郎、早く何か!」


急に言われても……


すぐ様ネットで検索する惣一郎。


購入した品をウンディーネに捧げて、


「これなんてどうでしょうか?」


「これは何かえ?」


惣一郎はポット型の浄水器の蓋を開け、噴水の水を汲むと、濾過された水が下に溜まる。


それをコップに注ぎ、差し出す。


ご賞味あれ!


水で出来た手に触れ、コップを渡すとゴクゴク飲み始めるウンディーネ。


「んーーーー美味! こんな澄んだ水は初めて口に致したのえ!」


惣一郎は何杯でも飲めると、カートリッジの説明をする。


「見事じゃ! 見事妾の心を掴んだのえ! 何でも妾に頼ると良いぞえ! いつでも手を貸してたまわすのえ!」


のえのえうるさいし、微妙に使い所が怪しい。


ウンディーネは浄水ポットを抱えて水の中に消えて行く……


気が付くと中庭に拍手が湧き起こっていた。


「やるやないか惣一郎! これで契約成立や! いつでも呼び出せるで」


頼りになるのだろうか……


流石勇者様!っとネコも集まり拍手喝采の中、恥ずかしそうにユグポンの中に消える惣一郎だった。




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