三話【残された問題】

「精霊ですか……」


惣一郎は会議室にみんなを集め、世界との話しを主だったメンバーに説明していた。


元々この世界の住人でも珍しい精霊の力を借りる事に、不安になるミネア。


「精霊なんてめったに姿を現さないのに、いったいどうやって探し出すのですか?」


「それは大丈夫や。世界ゆう奴に呼び出し方を教わっとるからな!」


ミネア達の疑問にドラミが答える。


まぁ、ドラミも半分は精霊だしな。


「俺も何処かに会いに行くのかと思ったが、ドラミが召喚出来るそうだ」


昔話の存在に力を借りると言う規模の大きくなる話に、動揺を隠せない住人達。


精霊についてはドラミに任せよう。



「精霊はそれでいいとして、問題はグルミターナの生き残りか……」


ツナマヨが腕を組み、問題を口にする。


そこなのよ問題は……


真似をして腕を組み悩むふりをするベンゾウ……


皆んなが目を閉じ考え始める。


「しかしあのミルドラが、まさかあのミイラだったとは…… 何だか混乱するな旦那様」


「ああ、俺も驚いたよ。今から自分を殺す相手を送り込まなきゃいけないとはな……」


「今度はベンゾウが守る!」


嬉しいが、もう起きた事なのよベンゾウさん。


今イチ理解出来てなさそうなベンゾウをよそに、こちらも首を傾げっぱなしのミコとガオ。


まぁ混乱するのも分かる。


惣一郎が異世界に飛ばされた事で、世界でも予測出来ない未来に変化したと言っていたが、まさかこっちの世界にも影響していたとは……


惣一郎が現れなかったらミルドラは向こうに現れる事もなく、この世界でどうなっていたのか?


ロンシールの思惑に、別の勇者が来ていたのかも知れないという、タラレバの迷路にハマり悩む惣一郎。


結局原因は俺なのだろうか?


「どの道、ロンシールが残した言葉を信じるしかあるまい!」


そのうち向こうから会いに来ると言うスワロに、それしか無いかと思う惣一郎。


不安はあの、寄生する能力であった……


キシルとネネルのどちらかが持つ能力。


そのふたりを倒したところで、他に寄生した者がいれば、倒した事にならないのでは無いのだろうか……


大きな課題を残し、会議は一旦お開きになる。




会議室を出るゴゴにツナマヨが、訓練を再開すると声をかける。


一瞬曇るゴゴの顔。


「わ、わかりました。皆を集め向かいます」


小走りで向かうゴゴとジジ。


「あまりイジメるなよ、ツナマヨ」


「そうも言ってられん。我々が去れば、あ奴らがこの世界を守らねばならぬのだぞ」


全てが終わった後に残された者を思うツナマヨ。


ツナマヨには話しておくか……


「少し時間いいか?」


惣一郎はベンゾウ達に先に行っててくれと話し、ツナマヨと会議室に残る。


「改まってどうしたのだ?」


「ツナマヨ、俺とスワロは向こうですでに死んだ身だから、因果って奴が切れて向こうには帰る事が出来ないんだ」


「誠か! 弁慶達は知っているのか!」


「弁慶は知らないだろうが、ベンゾウには以前話したが…… こっちに残る気でいると思う」


言葉を失くすツナマヨ。


「いや、そういう訳には行かない事は分かってる。ベンゾウは勇者として向こうでもまだ必要な存在だろ。少なくなったとはいえ、厄災もまだいる訳だし……」


「そうだな、今やジビカガイライのトップとしてベンゾウは、冒険者達の目標だ。それに弁慶もその事を知れば帰らないと言い出すぞ! ふたりを失う訳には…… また会いに来る事は可能なのか惣一郎殿?」


「次元を通れるのは、次が最後だ」


黙り込むふたり……


長い沈黙の後、ツナマヨが尋ねる。


「惣一郎殿はそれでいいのか?」


「一度死に別れたしな、覚悟もしてる。まぁ急な別れだったから今回ベンゾウを巻き込んでしまったのも、ちゃんと話しがしたかったのが…… いや、会いたかっただけかもな」


覚悟出来ている様には思えなかったツナマヨ。


「ふたりと話し合った方が良さそうだな」


「そうなんだが、なんて言い出せば……」


まだやる事がある。


今話せば士気にも関わる。


全て終わってからでも時間はあるだろう……







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