二十七話【一段落】

ボロボロに戦意を失くしたロンシールに、戦斧を高く掲げ構える弁慶。


「待て、弁慶!」


鉄球を従える惣一郎が、ロンシールに歩み寄る。


「あと2人、ダークエルフの少女がいるそうだが、何処にいる」


ロンシールは答えない。


「言え! 何処だ」


地面に寝そべるロンシールが、不敵な笑みを浮かべる。


「そのうち……会えるさ……」


どう言う意味か聞き返そうとする惣一郎に、次の瞬間!


ロンシールの足の間から現れた、サソリの様な尾が惣一郎に勢い良く伸びるが、毒針は惣一郎の手前で止まり、地面に落ちる。


弁慶の戦斧が振り下ろされたからだ……


「旦那様!」


「ああ、済まん大丈夫だ弁慶」


惣一郎の背後に降り立つスワロが横に並び、ロンシールの遺体を見下ろす。


「主人よ……」


「残党がいるが、グルミターナはこれで終わりだな」


「残りはあの2人か……」


「その2人がドラゴンの仇だ」


足取りの掴めない2人の少女。


このキシルとネネルと言う、2人のダークエルフのどちらかが、目を乗っ取り他人に寄生して操る蟲だという、キッドからの情報であった。


そのうち会える……


ロンシールの言葉を信じ、向こうから来るのを待つしか無い様だった。





夜が明け朝陽を浴びる惣一郎は、倒した蟲を片っ端から収納していた。


生き残りがいないか、みんなも警戒し周る。


ミコも回復薬ですっかり怪我は治った様で、ベンゾウと競う様に走り回っていた。


コイツらの元気は何処から来るのか……


ツリーハウスからゴゴ達も応援に駆けつけ、回収作業に然程時間は掛からなかった。


トトリ達翼族も空から近くを捜索し、危険がない事を知らせる。


「ご主人様、お腹減った」


「ああ、朝食にしよう」



ユグポンの村に戻る惣一郎がみんなと朝食を囲みながら、キッドの事と残党が近く現れるかも知れない事を話していると、ミネアが奥から遅れて現れる。


「惣一郎様、ちょっと見てもらいたい物が……」


ブラギノールとふたり表情が暗い……


「見せたい物って?」


「例の御神体なんですが……」


そうだった、生きてるかも知れない御神体の事があったんだった……


直ぐにミネアとブラギノールの後を、以前捕えた者を監禁する為に作った部屋へと付いていく。




部屋にはテーブルの上に置かれた御神体が横たわっていた。


包帯が緩み、飛び出す蟲の脚。


「脚なんて生えてたっけ?」


「それが、急に…… 最初は一本だけだったんですが、直ぐに2本目が生えてきて、そのあと3本目が…… それで最後にさっきまた4本目が……」


一本づつ、時間差で生えてきた?


それって……


ゲルドマ、教皇、キッド、ロンシールの順?


蟲の脚は6本。


残りの2人を倒したら揃うのか?


「惣一郎様、どういう事なのでしょうか?」


「確証は無いが多分、喰った奴を倒すと脚が復活するのかも知れんな……」


「揃ったらどうなるのでしょうか?」


「分からん……」


このまま放って置く訳にもいかないし、処分した方がいいか……


惣一郎は日本刀を出し、テレキシスで斬る!


折れた日本刀の刃が天井に刺さる。


マジか……


テレキシスで日本刀を振ると、腕に変な力が入る事も無いのでブレもなく、惣一郎の斬撃は達人の振りに匹敵する。


それが通じなかった。


200万の刀が…… 


後で弁慶に相談するか。


驚くミネアとブラギノールに、ここに人を近付けない様に頼み、流石に眠いと部屋を後にする惣一郎。


食堂ではベンゾウ達が、食べながら寝ていた……








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