第九章
一話【時間のズレ】
あれから数日、ユグポンの村に日常が戻りつつあった。
ジル達が畑を広げ、騎士達はツナマヨ達に訓練をつけて欲しいと、朝から悲鳴をあげている。
ゴゴ達もいつまでも異世界の助っ人に頼りたくないのだろう……
ベンゾウと弁慶も容赦なく騎士達を鍛える。
スワロとピノはミネアに捕まり、陣の研究に付き合わされていた。
メイドのみんなは、食事の準備や家事に駆け回っている。
セシルと共に料理の研究にも力が入り、時間をずらし食堂を訪れる村人達の舌を唸らせていた。
ドラミはまた何処かに篭っているのだろう。
トトリ達、翼族のみんなは集落へと帰っていった。
空を自由に飛ぶ彼らに、ユグポンの中は狭いのだろう。
2人の少女の行方は依然つかめない状況である。
大陸方面の捜索をトトリ達に依頼してあるので、何かあればドワーフ達が作った魔導具で連絡が入る様になっている。
同じくギネアとキューテッド達も情報を集めると、ビルナットから南へ移動中だ。
ゲルドマ達パテマ傭兵組合が拠点を置いていたクリゴウで何か掴めるといいのだが……
ブラギノールさんも途中までそれに同行し、本来の薬を売る旅に戻る。
ブラギノールさんにも魔導具を持たせているので、情報が入れば知らせてくれると言う。
そして惣一郎は……
地下に作られた部屋で、ドラミが作った檻の中の御神体を見ていた。
弁慶のグラドゥの戦斧のフルスイングにも耐えたミイラ。
あれから変化は無く、檻の中の台の上に横たわっている。
こんな硬い物よく喰えたな……
ミイラに残る魔女の意思によるのだろうか?
これをどう破壊するか、ひとり悩む惣一郎。
取り敢えず、大量の殺虫剤にでも漬けておくか……
するとそこにクロがノソノソと入ってくる。
「どうしたクロ。夕飯はまだだぞ?」
「久シイナ、惣一郎。我ダ、前ノ世ノ世界ダ」
「えっ、まだ傍観者から覗いてたのか!」
「時折ダガナ……今回モ見事約束ヲ果シテクレ、感謝スルゾ惣一郎ヨ……」
「あれ? 終わったみたいな言い方ですね……」
「我ノ世ニ、蟲ヲ送リ込ム者ヲ倒シタカラナ……開カレタ次元ハ、時ヲ超エ、数多ノ時代ニ送ラレタガ、ソノ元ヲ絶ッタノダ……」
「じゃ、ベンゾウ達の世界にいた厄災は、過去のも含め、ロンシールの仕業だったのか!」
「ソウダ……我ノ世デ増エタノモ居ルガナ……今現在、存在スル蟲ヲ倒セバ、コレ以上次元ヲ超エテ来ル蟲ハオルマイ……」
「次元を越える事で起きた時間のズレが、向こうで過去から長年に渡り、現れた厄災の正体だったのか…… えっ、人災じゃん! まさか全部送り込まれた蟲だったのか!」
「世ノ蟲モ残リワズカ、後ハアノ勇者デアル娘達ダケデモ、事足リルダロウ……」
ちょ待って、全部この世界から始まったのか?
魔女と呼ばれるこの転生者から……
御神体を見つめる惣一郎。
そこにドラミが現れる。
雰囲気が違う……
「惣一郎、この精霊の身体を借りて貴方に感謝を伝えます」
やっぱり!
「全て私の過ちでした…… 不遇の少女を転生させたばかりに、この様な…… まさかあの召喚スキルが、世の均衡をここまで乱すとは……」
まぁ彼女もここで、いい人生を送れれば、戦争にはならなかったのだろう……
「これで私の世から魔物が流れる事は無くなりましたが……」
「そう、こっちはまだ終わってないんですよ! まだ魔女を食べた者が2人いるし、この御神体をどうすればいいのか!」
「惣一郎ヨ、其方ニハマダヤル事ガアルガ、ソノ問題ハ過去ニ解決シテイルノダ」
ちょっと何言ってるか分からないんですが……
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