十七話【降る階段】

ユグポンと洞窟の入り口を囲む様に、ドラミの生やした木が複雑に入り組み、外壁を作っていく。


ドラミの大きな魔法に驚くミコ達。


ピノが熱い眼差しをドラミに向ける。


「凄い! ここまで大きな魔法が使えたのですねドラミお姉様!」


だが、ドラミの顔は真っ青で、その場に座り込む。


「あかん、魔力切れや……」


ミコが突然出来た外壁を見上げて感心していた。


へたり込んだドラミを気に掛けるセシル。


「大丈夫ですかドラミさん。その向かって来る蟲の数はどのぐらいなんですか?」


「100以上や。そこの黒いのと同じ奴やろ…… あかん、ウチはもう魔法使われへん。村の連中に応援を……」


「おいおい、こんな立派な外壁がありゃ、大丈夫だろ!」


鉈を振り回しミコが外壁を見え気ながら話しかける。


「壁は頑丈に作ったんやが、登られたら…… 万が一や」


「分かりました」っと、セシルがツリーハウスに戻って行く。


やれやれっとクロが、あくびをする。






通路を敵を倒しながら進んで行く、惣一郎達。


蟲に変身する者に命は無いが、ただの魔女崇拝者は、鉄球で気を失わせていた。


「惣一郎殿、手加減する必要はあるのか?」


刀の汚れを振って落とし、鞘に収めるツナマヨ。


「まぁ、俺たちは蟲を退治に来てる訳だしな。御神体もこっちにあるし、これ以上馬鹿な真似はしないだろう」


「主人がそう言うのなら……」


スワロも手加減する惣一郎に、思う所があったのだろう……


すると先を歩くベンゾウが、


「ご主人様! 入り口あったよ」


っと、元気なベンゾウ。


大きな両扉の前で早く早くっと、まだまだ余裕が伺える。


「なんであんな元気なんだアイツは……」


呆れる惣一郎に弁慶が、


「ベンゾウも旦那様がいなくなってから、ずっと落ち込んでいたんだ。ギルドの依頼も休みがちだったし、暇さえあれば島をうろうろと旦那様を探してたんだぞ。アタイも元気なベンゾウが見れて正直ホッとするよ」


「確かに腑抜けおって、トップ冒険者の自覚が足らなかったな」


溜め息混じりに話すツナマヨ。


ギルドマスターになったツナマヨにも色々心配をかけた様だ。


「そうだったのか…… 済まなかったな、あんな別れになってしまって」


「旦那様が謝る事なんて何もないぞ! 立派な最後だったし、アタイもこうしてまた会えただけで奇跡だ、本当に嬉しい」


「弁慶も暫くは落ち込んでおったではないか!」


「言うなツナマヨ殿!」


大きな体でモジモジと、顔を赤くする弁慶。


扉の前に着くと、ベンゾウが耳をあてて中を気にしていた。


惣一郎がサーチで中を確認する。


「降り階段だ。誰も居なそうだな、弁慶! 閉じ込められない様に、扉を破壊してくれ。なるべく静かにな」


「主人よ、音を立てずにこの扉を破壊するのは無理だ!」


っと、弁慶をフォローするスワロだったが、弁慶はすでに扉の片面に両手を突き、握力だけでベキベキべキっと穴を開け、そのまま持ち上げて扉を外し持ち上げる。


目を丸くするスワロ。


ベンゾウもツナマヨも、当たり前の様に見ていた。


外した扉を壁に立てかける弁慶。


惣一郎も当たり前の様に階段を降り始める。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る