十六話【匂いに釣られて】
毒を巻き込む空気の塊は、次第に白く大きくなっていく。
みんなにマスクを配ろうとする惣一郎に、杖を構えたスワロが必要ないと止める。
すると放たれた塊がふわふわと通路に飛んで行くと、スワロがみんなの居る洞窟に空気の壁を作る。
透明な空気の壁越しに弾かれた玉は、爆風を生み、通路を左右に広がっていく。
スワロの壁のおかげで、目の前の爆風がこちらには、一切吹き付けて来なかった。
「やるの!」
「スワロ、手数増えたな」
照れるスワロに、自慢げなベンゾウ。
感心するツナマヨと惣一郎に、弁慶が静かに闘争心を燃やす。
通路を一周回ってきた風が、弱々しく左右から戻って来る。
惣一郎の顔が曇る。
「やっぱ効きが薄いか」
だが反応は右に集中したようで、二手に別れず右を倒しながら進もうと手で合図する惣一郎。
スワロの肩を叩き、壁が消えると右に歩き出す。
馬車が横に2台並んで進める程の通路を、歩き始める惣一郎達。
所々横に木箱が重なった部屋が見える。
通路にも荷車や木箱などが置かれていた。
スワロが光剣を浮かべ、ベンゾウが小刀を握る。
「この先にいるぞ。2人と離れて1人」
ツナマヨと弁慶も武器を構える。
徐々に咽せる声が聞こえて来る。
頭を抱え気分が悪そうな男と、咳き込む男。
光剣を飛ばそうするスワロを惣一郎が止める。
「待て、その奥だ」
惣一郎の鉄球が2人の男に撃ち込まれると、その場に倒れる男達。
2人はただの人の様だ。
その奥で小刻みに震え泡を吹く男が、惣一郎達に気がつくと、木箱に寄り掛かる手と顔が変形していく。
服を裂き、腰に巻かれた新たな腕が現れる。
ジジ、ジジジっと鳴らす羽。
怒りを露わにする目が蜂の様な目に変わると、天井まで飛び跳ねる!
瞬時に距離を詰め、惣一郎の盾に遮られる蜂人間が「何故ここに!」っと、声を出し驚く。
スワロの光剣が、その驚く蜂人間に突き刺さると地面に転がり、落とした自分の腕を拾う。
「来るぞ!」
惣一郎の声に、通路の奥から新たに3人の男達が駆け寄る!
みな青い顔で吐き気に耐えている様な顔だった。
「女神様!」っと驚く3人。
1人が慌てて戻ろうとする。
「ベンゾウ逃すな!」
肩を揺らすガオが、足元の潰れたゴキブリ人間を息荒く見下ろしていた。
「ったく、しぶといな!」
うんざり顔のミコが汚れた鉈を振り、汚れを落とす。
ピノが座り込み、クンクンと倒したゴキブリの近くの地面を嗅ぐクロを見ていた。
「クロ? どうしたの」
セシルがクロに近付き、倒したゴキブリを見た。
「この此奴らの匂い…… 仲間を呼ぶぞ!」
顔を上げるクロが暗い森の奥を見る。
そこにドラミがユグポンの中から慌てて出て来る。
「蟲が、蟲が集まって来るで!」
杖を掲げ、慌てるドラミが洞窟の入り口とユグポンを守る様に地面から木を生やし、見る見る壁を作っていく!
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