六話【擬態】
「さぁ、この先の森からは飛ぶぞ! ブリティッシュナウ」
「ブラギノールです」
転移陣を潜り、大陸へと上陸したギネア達。
赤い岩場に足を取られながら身を隠すように、先に見える森を目指し進んでいた。
上空には時折、空中で止まっては進む大きな棒の様な蟲が見えていた。
「ギネアさん、もっと低く! あれに見つかったら最後ですよ」
「ああ…… それより彼は何を?」
翼族の1人が、空の蟲より地面で何かを探す様に離れて行く。
「また武器に交換出来る物が落ちていないか、探してるそうです」
「…………そうか」
誰も居ない集落では、身を隠し休むスワロとキッドの姿があった。
「女神よ、追手がココを嗅ぎつけるのも時間の問題だ。俺が北に奴らを惹きつけるから、少ししたら女神は、このまま南東に向かうんだ」
「南東に何かあるのか?」
「ああ、翼族達が大陸を行き来する為の洞窟がある。そこまで行けば奴隷契約の強制転移も使えるだろう」
「お前はどうするのだ!」
「俺の事は心配するな! ひとりでも逃げ切って見せるから、御神体を頼む! 決して奴らの手には戻すな」
「蟲から逃げて巻き込んだ癖に、よく言う!」
「今度は信じろ! ここで奴らに囲まれたら、2人とも終わりだぞ」
「それに触りたくないのだ! ゾワゾワする」
「わがままを言うな!」
スワロに御神体を渡すキッドが集落を出ようとすると、そこに翼族の1人がタイミング良く集落に戻ってくる。
「おや? お前らは……」
鳥人が大事そうに抱える武器を見たスワロが、直ぐに気付く!
「その武器は主人の! 仲間は、主人… 勇者はいるのか!」
「えっ? 仲間はもう直ぐ…… お前は誰だ?」
「俺はキッド。彼女は捕えられていた勇者の仲間だ。トトリは? トトリも来ているのか?」
「おお、俺は翼族一早く飛ぶから、斥候を任されている[ニトリ]と言う。族長達ももう直ぐ追い付くが、ここには呼べん、危険な感じがする!」
何か危険を感じ取ったニトリは、嘴を開き鳴き始める!
一瞬聞こえた鳴き声は高音へと徐々に聞こえない音に変わって行く。
「待て、彼女を仲間の元へ!」
慌てるキッド。
ニトリは構わず、危険を知らせる高周波を仲間に送る!
すると突然スワロが倒れ、危険を知らせるニトリの胸からは、血に濡れた緑色の蟲の手が背後から貫き伸びる。
ニトリの鳴き声は止まり、最後に見た物は、縦に割れたキッドの顔から覗く緑色の蟲の顔だった。
ニトリを投げ捨てるキッドだった蟲。
キッドを表面に表していた羽が小刻みに震えながら広がり、蟲の姿を現す上位種。
キッドに擬態していた上位種は[コノハムシ]だった。
「クソ、こんな所で…… 教皇様の策が……」
立ち尽くす蟲は少し考えると、倒れたニトリをバリバリと食べ始める……
不意を突かれ、御神体を抱えたまま床に倒れ気を失うスワロ。
上位種はニトリの遺体を処分すると、その場から姿を消す。
森の中を木の高さに飛ぶトトリ達。
ギネアとブラギノールもその足に掴まれ、森の中を飛んでいた。
「一瞬、先に出ていたニトリから信号が届いたんだが……」
「確かに危険を知らせる信号でした。どうする族長!」
「ふむ、なぜ直ぐに信号が消えたのか……」
木の枝に止まるトトリ。
後続の仲間も木に止まり始める。
「集落に向かうのは危険かも知れん」
するとギネアが、
「もう大陸に入ってるし、惣一郎様に一度報告をしよう」
っと地面に降り、種を置く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます