十八話【見送る会議】

中庭では陽が落ちるまで、誰もが無言で布に包まれた仲間の遺体を見ていた。


犠牲を出してしまった事を悔いる、惣一郎。


空が暗くなると子供達が、火を放つ。


舞う火の粉を眺めながら惣一郎が静かに話し始めた。


「今後は俺とベンゾウのふたりで、スワロを追いエノルガス大陸へと向かう。みんなには……」


「待ってください! 私も行きます」


ミネアが力強い眼差しで、真っ直ぐ惣一郎を見る。


「惣一郎様、我々騎士団も気持ちは同じです!」


「ああ旦那、仲間がやられたんだ。このままじゃ終われん!」


「すまん、俺の配慮が足らなかったばかりに、ドラゴンを……」


「アホ、そうやないやろ!」


「そうです惣一郎様! ドラゴンの犠牲は悲しいが、彼は仲間の為に犠牲になったんです!」


「せや、責任感じるんわ分かるが、スワロも仲間や。後は任せて待ってますなんて出来るか!」


「旦那様、我々ではお役には立てませんが、旦那様が行くなら何処だろうと一緒です!」


「ええ、たとえあのエノルガス大陸だとしても、ここにいるみんな一緒です!」


みんな……


「とは言えまだ情報が少な過ぎる。まずは情報を集めながら北に向かいましょう!」


「我々も別行動で、情報を……」


「いや、仲間の…みんなの顔がバレた恐れがある。奴が何処にいるか分からない状況での別行動は避けた方がいい!」


「確かにしばらくは隠れてる方が無難じゃろ」


「でも奴も流石にこの村が、ツリーハウスの中とは思わんやろ!」


「いや乗っ取られた後、司祭の記憶が残るのか分からないし、向こうにはキッドもいる。バレてると思って行動した方がいい」


「ドラゴンの首筋に噛み痕がありました。その中央に深い傷も」


「これもそうじゃ、見てみい!」


チンが、司祭の遺体の首を見せる。


「古い傷じゃが、真ん中に深い傷の痕がある。何か針の様なものを刺した様な傷じゃ」


「昨日今日の傷じゃ無いですね……」


「卵を産み付け、いつでも乗っ取れるのだろう。今の所見分けるのは、その傷だけだな」


「スワロは俺との契約があり、器に出来ないと言っていた。きっと首に現れる奴隷紋が卵を産み付けるのに邪魔な影響をするのだろう」


「ドラゴンは騎士として契約を解除していたのが仇になったと言うのですか……」


「それもまだ分からん、スワロだけ特別なのか、奴隷契約そのものなのか……」


「それじゃ契約し直した方が良く無いですか?」


「いやそれでは自由に行動出来ん、首を守る防具を作のがええじゃろ!」


「やはり魔女なのですか?」


「分からんが蟲の仕業だ。寄生蟲と言う蟲の」


「自分の命を分ける…… 確かに魔女の仕業でしょう……」


「ババ、何か知ってるのか?」


「かつて魔女は、自分の命を分け与え、瀕死の仲間を救ったと伝承に…… きっと救ったのではなく、乗り移っていたのでしょう」


「魔女って蟲だったのですか?」


「分からん…… だがコイツらは蟲が混ざってる」


「旦那…その場合、全ての魔女を倒さないと奴を止める事は出来ないと言う事か?」


「だろうな…… とにかく今後、魔女崇拝者と出会ったら、全て奴だと思って対処する」


俺とベンゾウなら倒せる強さだが、騎士達では倒す事は無理だろう……


ドラゴンを見送りながら、会議は遅くまで続いた……





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