十一話【愛の行方】

仕方なく追いかける惣一郎達。


ドラミは種に戻り、スワロを抱えて木の上を、転々と瞬間移動して行く惣一郎。


ベンゾウは素で追いかけて来る。


すると種からドラミの声がする。


「惣一郎! 近くの蟲があの蟻に気付いたみたいや、向かって来るで!」


捕食する気なのだろうか?


たまたま居たのか、近くのムカデが蟻を追いかけ、森を縫う様に近づいて来る。


「先に倒すぞ!」


進路を変え、ムカデの前に出る惣一郎達。


急に現れた惣一郎達に驚く、巨大なムカデが顔を上げ牙を開く!


スワロが杖を構え、巨大な光剣を宙に作り出すと、ムカデに背を向けて前に現れるベンゾウが驚く。


「何それ! 大きい」


空の巨大な光剣に驚くベンゾウに、スワロが叫ぶ!


「ベンゾウ殿、後ろだ!」


だが、光剣に見惚れるベンゾウの背後に、牙を剥くムカデの首がゆっくりと落ちた。


「「 へ? 」」


出番も無く、光の粒となり消えていく光剣が、どこか寂しそうだった……


「よ、よし作戦通りだ!」


そう言いながら、動かなくなったムカデを収納する惣一郎。


冷たい視線のスワロが、


「見失いましたね」


っと、キッドが消えた方角を向く。


「まぁ目的は一緒だ。追いかけるぞ」


っと言う、惣一郎の背中に張り付くベンゾウ。


転移する惣一郎を追いかけるのが疲れたそうだ……


転移する為、抱き寄せるスワロが、


「もう放っておいていいのでは? 自業自得だ! それにもう直に暗くなる。奴も身を隠すだろう」


まぁ、それもそうなんだが……


放って置いて死なれても、目覚めが悪いが……







転移を繰り返し、ようやく追い付く惣一郎達。


蟻にまたがるキッドの前に姿を見せると、地面を滑り急停止する。


「やっと追いついたか!」


追い付いたのはこっちだが。


「そんな急いで、何処行くの?」


「いや、追いかけて来たんだが……」


「なんで?」


「えっ? なんでって…… あんた運命の女に出会って、簡単に諦められるのか?」


話にならん……


「貴様、勘違いするな! 運命で結ばれているのは、私と主人だ!」


「そんなの関係無い! 惚れた俺が決める!」


「なっ! 迷惑だと言っている!」


「自分に嘘は付けん!」


「自分の事しか考えんのか貴様!」


「自分に素直でありたい!」


ダメだこりゃ。


ケラケラケラ。


話の通じる相手じゃ無いな……




惣一郎とベンゾウは、いつの間にか暗くなって来た森でお菓子を食べながら、スワロとキッドのやり取りを眺めていた。


嬉しいそうなベンゾウ。


「私が嫌いだと言っているのだ! なぜ分からんのだ」


「俺が変えて見せる!」


話はずっと平行線だった。


「いや、貴様にはそんな機会も無いのだ! 私と主人の邪魔をするな!」


「そんな一途な所が好きだ!」


「ご主人様、お煎餅、なくなっちゃったよ」


「もう直ぐ夕飯だ、我慢しなさい」


「貴様と喋っていると頭がおかしくなる!」


「俺も君を想い、おかしくなりそうだ! 見ろ! 一緒じゃないか」


「あぁぁぁもう! 全く話にならん!」


「愛は理屈じゃ無いのさ!」


「ご主人様、ジュース」


「ん、ああ、ほれ」


「主人よ…… もういいよな?」


杖を構えるスワロ!


へ?


キッドも上着を脱ぎ、拳を構える!


「力ずくも悪くない!」






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