十話【思惑】

ツツの転移屋でも惣一郎が幻腕を出すと、直ぐに行きたい場所へと案内してくれた。


転移屋が味方についてくれるのは大きい!


そのままユースエル街まで転移する。




着いたユースエル街は、賑わう歓楽街であった。


昼間っから酔った人が通りに倒れ、派手な看板の店が並ぶ。


「あれ…… ここで間違いないよな?」


「賑わってるね〜」


「主人よ、聞き間違えたのではないか?」


首を傾げる3人。


「まぁ確認はしとくか。壁の外でドラミに調べてもらおう」


すると突然話しかけて来る人影が!


「やっと会えたな、ハニー!」


通りに出ている、店の看板に片足を乗せ、帽子で顔半分を隠す男。


キッドだ。


思ったより看板が高いのか、やや姿勢がぎこちない。


「[セリスの街]で蟲の情報を集めてる奴がいると聞いてな、情報を流せば会えると思ったぜ!」


どうやら上手くこの街に、誘導された様だ。


惣一郎がわかりやすく、刀を2本出し浮かせると、ベンゾウはキッドの背後から黒い小刀を首に構える。


「騙したのか?」


スワロも杖を構え、ジワジワと燃える様な黒いオーラを身体から出し始める。


やはりベンゾウのと似ている。


「まっ、待て待て、情報は本当だ! 街から南に数日行った所に、本当に蟲の巣があるんだ」


首の小刀に気付き、慌てて両手を上げるキッド。


「南だな」


っと、刀を仕舞う惣一郎。


「あっ、ああ。こうでもしなきゃ、もう会えないかと……」


ベンゾウとスワロも、キッドに興味を無くす。


歩き出す惣一郎に、キッドが、


「待て、俺が案内する!」


「必要ない」


「俺じゃなきゃ、わかりずらい場所だ!」


「必要ない。情報が正しければ感謝するが、もう騙す様な真似はしないでくれ」


「頼む! 俺も…」


キッドが言い終える前に、姿を消す3人。


瞬間移動で街の外れ、外壁まで来ていた。


「ご主人様、いいの?」


「使える奴でも性格に難ありだ」


「あんなのが仲間になったら、敵より注意が必要になるぞ! ベンゾウ殿」


「まぁゴゴ達もいるしな、まずはそっちを鍛えないと」


騎士のみんなも訓練は続けている。


惣一郎の出す食事だけでも、大分強くなって来ていた。


数人には武器も渡してある。


あっさり瞬間移動で壁を越える惣一郎達。


種を置くとドラミが現れる。


「話は聞いとったで! 確かに南の崖におるなぁ。崖の中腹に洞窟があるわ」


「嘘ではなかったか」


「でも、上位種は見当たらんなぁ〜 洞窟の奥じゃウチには分からん。行って確かめるしかないで」


「距離も結構あるそうだし、急ぐ事も無いかな? 少し街で休んでから行くか?」


「ご主人様、なんか来る」


すると勢い良く壁の門から飛び出す、蟻に乗ったカウボーイ。


こちらに気付かず、真っ直ぐ南に向かって行った。


「しつこい男だ!」


「あの勢いで先に突っ込んでったら、あの男、死ぬんちゃう?」


面倒臭い奴だ……






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