十五話【同化の割合】

ラミエル改めドラミは、ドリーの記憶があるからか、あっという間に馴染んでいた。


ミネアに動きやすい服を貰い、タイトな黒のパンツに編み上げのブーツ、白のインナーに惣一郎とお揃いの黒のローブ。


清楚なイメージは無くなり、真逆のダークなヒロインの誕生に、何故かテルミナとマチリナが、仲良く水色の髪を結っている。


まるで着せ替え人形だ。


惣一郎は一階の部屋を片し、ドラミの部屋に作り替えていた。


「なぁ主人よ、予定通りこのままトリグルに向かうのか?」


「ああ、買い物もしたいしな」


「だが、ドラミ殿を見られたら大騒ぎになるのではないか?」


「もう奴隷じゃ無いんだし、気にしなくても良いだろう? むしろ酷い目にあわせた奴らを驚かせたいぐらいだ」


「主人がそうでもドラミ殿は辛い過去を…… そうだな、今のドラミ殿なら平気かも知れんな」


そこに髪を編んだドラミが部屋に入って来る。


「一々歩かなあかんのが、面倒くさいわ〜 おっ! ええやん、こんな立派な部屋ホンマにひとりで使うて、ええんか?」


「ああ、取り敢えずだがな」


「おおきに!」


言語スキルのせいとは思うが、異世界で関西弁を聞くとは…… 妙な感じだ。


「なぁドラミ、まだ木々と意識の共有は出来るのか?」


「問題ないでぇ! ユグポンとも変わらずや」


「こっちに向かってた蟲はどうした?」


「ああ、あのごっつデカい蟲なら、街に向かったままやで」


「はぁ、街に?」


「せや、潰れりゃええねん、あんな街」


「アホか! こっちに呼び戻せ!」


幻腕を出し、ドラミを抱えて外に出る惣一郎。


「なんや、あないな街、助けるんか?」


「当たり前だ!」


こりゃ、ドリー8割、ラミエル2割の割合じゃないのだろうか?


スワロも追いかけて、木から出て来る。


「しゃ〜ないの〜 ウチの新技見したろ!」


するとドラミは手を合わせ、集中する……


「あかん! 惣一郎、離れすぎてもうた!」


ドアホ!


慌てて木を種に戻し、スワロとドラミを抱えて瞬間移動で空に出る!


いきなりで驚くスワロが背中にしがみつく。


幻腕に掴まれたドラミは手足をバタつかせ、落ちながら叫ぶ!


「ウチ、高いところ苦手や!」


「暴れるな!」


再度転移して更に上空へと移動すると、


「どっちだ、ドラミ!」


「ヒィ〜 向こうや、向こう!」


そのまま転移を繰り返し、厄災を追いかける!



前後に抱きつかれた惣一郎が、遠くに蟲を見つけると、


「間に合ったか、降りるぞ!」


っと、地面に降りる。


腰を抜かしたドラミが、


「無茶苦茶やで、惣一郎! 漏らすとこやったわ」


「うるさい! 早く呼べ」


「なんや人使い荒いの〜 奴隷商と変わらんわ」


「アホ! お前が早く言わないからだろ! 街の無関係な人まで犠牲になるんだぞ! 買い物だってしたいのに」


渋々立ち上がるドラミが、手を合わせ集中すると、遠く木を薙ぎ倒す音が止み、羽を広げた蟲が惣一郎の元へ飛び戻って来る。


「どや! ドリーと一緒んなって、蟲単体でおびき寄せれる様になったんや! 凄いやろ」


地味な新技だ……


「スワロ来るぞ!」


「ああ、任せておけ! 主人よ」


杖を構え掲げて集中するスワロ。


惣一郎も盾と槍を出し、ドラミの前に出る。


黒い大きな羽を広げ、薄い茶色の羽で飛び向かって来る、巨体の割に小さな2本の角の様なハサミ。


クワガタのメスだろうか?


10mは裕に超える大きさであった。


勢いそのまま向かって来るクワガタに、スワロの光剣が間に合わない!


惣一郎は盾をクワガタの頭部に押し付け勢いを殺す!


顔に透明の盾を押し付けられ嫌がるクワガタは、地面に降り立ち、盾をハサミで挟み、簡単に曲げていく!


薄い茶色の羽が、仕舞い切れて無い。


ギシギシギシ!


そこに上空に現れた大きな光る青龍刀!


グルンっと回り、クワガタを押し潰す!


盾を咥えたまま、頭部を二つに割る蟲。


だが、鍵爪を付けた脚が動き、スワロを襲う!


その脚を盾が弾くと、槍がクワガタに降る!


背中に刺さった槍が、クワガタの脚の関節を折るが、ギシギシとまだ動く!


スワロが杖を振り上げると、新たにナイフの様な光る光剣が現れる。


だが発射されずに、光りがメラメラと炎の様に型取り赤くなっていく!


燃える短剣。


スワロの杖と連動し、クワガタに凄い速さで突き刺さると、ボワっと炎が燃え広がる!


割れた頭部の中からも、火が噴き出る!


炎槍の魔法と光剣を融合した技であった。


中から燃えるクワガタは、ようやく動かなくなる。


「やるじゃ無いか、スワロ!」


「ああ、ドリーとラミエルの同化でヒントを得たのだ! ぶっつけ本番だが、上手くいった様だ」


スワロに歩み寄るドラミの目線は、スワロの持つ杖に、注がれていた……






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