十四話【よろしく】

翌朝、ユグポンの中の中庭に描かれた、魔法陣の中に立つラミエルとドリー。


惣一郎達が見守る中、ドリーの枝の様な腕が広がりラミエルを包む。


「共に生きよう……」


ドリーの声を聞くのは、これが最後であった。


陣が青白く光り、徐々に眩しく白く世界を染めると、ゆっくりと消えて行く。


陣があった場所に影は、一つだけであった。


水色の長い髪で、少し成長した様に見えたラミエルが目を開ける。


白い自分の手を見つめ、立ちすくむ少女。


「大丈夫か?」


待てずに声をかける惣一郎に、色白の少女が振り向く。


「ああ…… めっちゃ調子ええで!」


『『『『 ん? 』』』』


ボロ布では可哀想と惣一郎が、似合いそうな白いワンピースを着せていた、清楚なイメージの服で、足を広げ屈伸を始める少女。


「体がめっちゃ軽いわ!」


目を丸くする惣一郎達の前に、可憐な少女はいなかった……


驚くスワロが「ラミエル殿?」っと、声をかける。


「ああ、どうなんやろな? ウチはラミエルなんかドリーなんか、よう分からんわ」


何故に関西弁?


少し大人びた少女が、体を動かしながら答える。


「なんや、アホみたいな顔して、上手く行ったんやで、惣一郎」


腕を振り、肩を回しながら微笑む顔は、嬉しそうなラミエルであった……





予想外の衝撃を受けた惣一郎が、なんとか自分を取り戻し、少女に話しかける。


「スキルは… スキルは制御出来てるのか?」


「ああ、問題あらへん! ただな〜 前みたいに木に潜ったりは、でけへんみたいやな」


「あっ、そうですか……」


ガサツにスカートを捲し上げ、動きずらそうな態度で返事をする少女。


ギャップが凄い……


「まぁ、木には潜れへんが、操るのは出来そうや! 魔力も上手く馴染んどる」


まっ、死なずに済んだだけでも……


良しとするか?


仲良くなりかけた、テルミナとマチリナも引いていた。


「主人よ、コレはドリーが強く残ったのだろうか?」


知らんがな!




そのまま中庭にテーブルを出し、深刻な顔の惣一郎達。


ミネアがお茶を配ると、お茶を啜る少女が、


「そんなんどっちでもええで、ラミエルでもドリーでも好きに呼んだらええ! どっちでもあるしな」


っと、ベンチで胡座をかき、目の前の煎餅に手を伸ばす。


またこのパターンである……


目を閉じ熟考をしていた惣一郎より先に、目を開いたスワロが、


「ゲイブリル…… いや、テノゲイブリルは! 二つが一つにって意味だ」


「なんか、ピンと来ませんね〜」


ミネアも言うようになった。


悔しそうなスワロ……


惣一郎はまだ考え中。


関西弁、関西弁…… ヘイジ、トウジ、ヒメコにテンちゃん…… パーマンにもいたな〜


すると、惣一郎に任せてはいけない予感がするテルミナが、


「ドリーとラミエルで[ドラミ]はどうですか?」


っと、恐ろしい事を言い出す!


流石にそれは……


だが、異世界で何も知らないみんなは、


「良いですね〜 ドラミ!」


「ふむ、呼びやすい良い名だ」


「ドラミちゃん! 可愛いです」


「なんでもええで! ほなそれでいこか」


っと、高評価であった。


不味い…… 阻止しなくては。


「あ〜 ゴホン! 俺が考えたヨンゴウはどうだろうか?」


「よろしくねドラミ!」


「改めてよろしくなドラミ殿!」


「ドラミちゃん、もっと動きやすい服の方が良いんじゃない?」


あれ…… シカト?







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