八話【枯れ木の貴婦人】

惣一郎はジャイアントウェタをアイテムボックスに収納すると、驚き固まるパイジンに話しかける。


「危なかったな、何があったんだ?」


「惣一郎さん…… あんた何者なんだ……」


巨大な蟲を目の前で倒し、容易く消してみせた惣一郎。


ダークエルフの少女も怖がり、パイジンの後ろに隠れてこっちを見ていた。


「訳あって蟲を退治しながら旅をしている」


まだ信じられずに固まるパイジン。


惣一郎はテーブルを出し、スワロといつもの様にお茶を飲み始める。


こうなっては時間が掛かるだろう……





お茶で一息付くパイジン。


少女もストローでジュースを美味しそうに飲んでいた。


「とにかく助かったよ、もう死ぬと諦めかけていた」


「それで、何があったんだ」


「この子が森で、仕掛けた罠を見に行った際に蟲に襲われそうになってな。そのまま仲間達を巻き込む訳には行かないと、ここまで逃げて来たのだ」


「そうか、他は無事だったんだな」


「ああ、流石にもう、死んだと思っていたよ」


「妾のおかげじゃ、感謝するがよい!」


惣一郎のポッケの種から、現れたドライアドリス。


腰を抜かすパイジンと、ジュースの入ったコップを落とす少女。


勝手に出てくんなよ……


驚いたパイジンが、


「ま、ま、まさか![枯れ木の貴婦人]か!」


あれ? 


「そ、惣一郎さん、なぜ枯れ木の貴婦人を!」


慌てて少女の後ろに隠れるパイジン。


「おい、森の民は何だって?」


「いや…… 何じゃ、枯れ木の貴婦人とは……」


パイジンは語る。大昔の伝承を……



パイジン達、森の民の祖先は過去に一度、この森で絶滅の危機に遭っているという……


精霊ドライアドリスに精を搾り取られ、子孫を残せなくなるという危機に……



「ほら見ろやっぱり、災いの元じゃ無いか!」


スワロの言葉に、ドライアドリスが慌てる。


「い、いや知らぬぞ! 妾では無い!」


「全然、崇拝されて無いじゃないか……」


「待て待て惣一郎、妾では無い! 潤いは足りぬが、妾はまだ、枯れ木では無いぞ!」


いや枯れ木の様ですが……


驚く少女の後ろからパイジンが顔を出し、


「そ、惣一郎さん、な、何故ドライアドリスを連れているのだ」


っと声を震わせる。


溜め息を吐く惣一郎は、お茶を淹れ直す。




「す、凄いな、こんなに早く本当に見つけて来たのか? ツリーハウスを……」


「ああ、だが変なのが憑いた事故物件だった」


「憑いてたとは何だ! 妾は宿っている精霊じゃぞ、尊く敬われる存在なのだ」


ビクっ!とするパイジン。


「よっぽど怖く語らえてる様だが……」


「妾では無い! きっと別のドライアドリスじゃ!」


出会いが出会いだけに、信じられん。


「主人よ、やはりあの家は手放すしか」


「そうだな、見た目もデカいしな〜」


「いえ、見た目は惣一郎さんの思う通りの大きさに出来るのですが……」


「如何にも、種から巨大な大木まで、あらゆる大きさに変えられるし、周りの植物と似せて擬態する事も可能じゃ!」


ビクっ!


そこにパイジン達を心配し、追いかけて来たダークエルフ達が現れる。


「パイジン! 無事か」


現れた6人の褐色のエルフ。


みな銀髪で黒髪のスワロとは少し違う。


「[キルト]無事だったのね!」


少女に抱きつく、綺麗な銀髪エルフの女性。


すると、遠巻きに枯れ木と思っていたドライアドリスに気付き、腰を抜かす4人のダークエルフの男達。


「パ、パイジン!」


ややこしくなりそうだ……






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