十三話【ペアルック】
解体屋へ向かう中、惣一郎はスワロに、
「冒険者ギルドがないって不便だな〜」
っと、話しかける。
町に入ってから大人しいからもあった。
「惣一郎殿、済まない気を使わせたな」
「そんな事無いぞ、気にし過ぎだ。でも冒険者がいない世界か…… 依頼とかもなさそうだな」
「冒険者はいないが、代わりに傭兵団がある。旅の護衛や戦闘を生業にしてるのが傭兵なのだ。素材収納などは専門の収集家がいるし、まぁ細かく適材適所で分かれている感じなのだ」
「なるほどね〜 ひとまとめに便利屋が、よく知る冒険者だったって事か」
「そんな感じだな…… この世界には国の様な大きな組織の話をほとんど聞かない。もしかしたら無いのかも知れない」
国が無いか……
そんな話をしていると、解体屋らしきものが見えてくる。
大きな赤い天幕に、壁の様に積み上げられた蟲の素材。
前には蟲が引く馬車が、山積みの素材を積んで並んでおり、忙しなく獣人と人族が働いていた。
「惣一郎殿、あそこの様だな……」
「ああ、どうでも良いが、その[殿]っての辞めないか?」
「ん? ああ、ご主人様とお呼びした方がいいか?」
不適な笑みを浮かべるスワロ。
「アホか! 呼び捨てでいいって話だよ」
ニコニコしながらスワロは、フードをさらに目深に被る。
「アンタら買取か? 馬車は?」
話しかけて来た獣人の男。
馬だ…… 馬面の男が馬車がどうこう喋っている。
「えっ、あぁ、馬車は無い。マジックバッグに入れている」
惣一郎は杖しか持っていなかった……
不審がる馬面の男。
「マジックバッグ? 手ぶらじゃ無いか。それにあんな高価な物お前みたいな魔族が持ってる訳無いだろ」
するとスワロが割って入る。
「済まん主人(あるじ)は、収納スキルを持っている。マジックバッグは物の例えだ」
白いローブの褐色の魔導士を見て馬面は、
「こりゃ珍しい。レアスキル持ちか!」
っと驚き、スワロを舐める様に見る。
ザックリと胸元が開いたワンピースだが、インナーが双丘を隠していた。
フードを深く被る不審な風体ではあるが、耳が隠れているので、エルフだとは気付いていない様だった。
馬面は鼻息荒く「ブヒヒヒーン」っと惣一郎を無視して、スワロに話しかける。
「量は?」
「大型のハサミ型の攻殻蟲一匹と大型の多脚蟲、それと鎌を持つ中型だ」
「ほぉ〜 随分と羽振りが良いな」
馬面は付いて来いと奥の開いたスペースへ案内すると、素材をココに出す様に指示する。
惣一郎はやや不機嫌に厄災の死骸を出すと、周りにいた人達が集まり出す。
「こりゃすげ〜 黄金蟲か」
「デカイな〜 こんなの持ち運べるのか、羨ましいぜ」
驚く声の中、無言で査定に入る馬面が、
「おい、何処でコレを?」
「北の荒野で死んでいたのだ」
「鎌の方は状態が悪い、だが、こっちの二匹は、重なって切られた様だな…… どうやったらこんな…… おい、コレをやった蟲は見てないんだな?」
ガヤガヤと騒ぎ出すギャラリー。
「ああ、我々が見つけた時はこの状態だった」
淡々と顔色を変えずに、答えるスワロ。
少し考えた様子の馬面が「ヒヒーン」っと声を上げると、周りにいた店員だろう人族が、緑色のナイフでサクサク切り分けて行く。
惣一郎は前にも見た切れ味の良いナイフに興味をそそられる。
「魔石が見当たらんが、素材のみだと…… 黄金蟲は700枚、多脚蟲は220枚だが、こっちは買い取れんな。要らなきゃ引き取るが金は出せんぞ……」
良い金額だな……
するとスワロが、
「鎌は無事だ! それだけでも2本で100枚の価値はあるはずだが」
っと、強気発言。
「解体費用だ、黄金蟲は色を付けたろ」
「では、鎌は他で売る」
「ちっ! わかった2本で60枚だ」
「80だ」
「……70」
「良いだろ」
頼もしいスワロであった……
現金を受け取り、町中へ戻るふたり。
フードで耳を隠しても、スワロに視線が注がれる。
「金も入ったし、白いローブじゃ目立つから、なんか服でも買うか?」
確かに周りに真っ白な服は見当たらない。
惣一郎は服で目立ってると思っていた。
「主人よ、私はコレが気に入っている。気遣いは無用だ」
「[あるじ]も辞めないか?」
「良いではないか我が主人よ!」
惣一郎はスワロと同じ白いローブを購入し、歩きながら着替え、フードを被る。
「コレなら俺も目立つか?」
お揃いの白いローブ姿。
スワロは喜んで惣一郎に抱きつく。
おかげで注目の的になった……
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