十一話【離れられないふたり】

「死なないの?」


「ああ、離れられないとは…… いや試して見よう、その方が早い」


マジ? 怖いんですが……


テントを出るスワロの後を、不安顔の惣一郎が付いていく。


「惣一郎殿、遠く離れてみてくれ」


大丈夫なのだろうか……


「では、私が離れよう」


「分かった、じゃ離れるぞ!」


惣一郎は瞬間移動で森の奥へ転移する。


すると離れた直後、首の紋様が浮き上がり、目の前の地面に魔法陣を描き出す。


現れたのは、スワロだった……


「えっ、転移魔法?」


「ああ、強制転移魔法だ。これが離れられない理由だ。どうしても離れる時は、地面に杭を打ち、鎖で繋ぐと固定され、強制出来なくなるのだ」


あっ、そう言う理由だったのか…… あの鎖。


「これで問題は無いな!」


…………


これは逆に、強味にもなり得るのでは無いのだろうか……


まずは知らない世界の事を、もっと知らなくてはいけない様だな。






テントに戻り、食事の準備を始める惣一郎。


スワロは嬉しそうにレーテウルを眺めていた。


調理器具も充実して来たので、作り置きも考え、カセットコンロでご飯を炊き、寸胴ではシチューやカレー、ミネストローネなどが作られていく。


包丁やフライパンが宙に浮き、惣一郎は杖を持って立っているだけで、とても作ってる様には見えなかった。


「なぁスワロ、この世界では転移魔法はポピュラーなのか?」


「ぽぴゅ? ああ、町に行けば転移屋があるぞ、有料だそうだがな」


「へぇ〜 じゃ移動は楽そうだな〜」


「旅をする上では欠かせない物らしいな、厄災から生き抜く事も」


なるほどね〜 生き残れる訳だ……


「スワロも大分回復したし、明日町に戻って旅を始めるか?」


「ああ、いつでも戦えるぞ! 早く試したいぐらいだ」


昔のスワロに戻った様で、惣一郎も顔がほころむ。



夕食を摂り、クリーンをかけ、仕切の向こうのベッドで横になるスワロ。


惣一郎もベッドに入ると灯りが落ちる。


「なぁ惣一郎殿」


「ん?」


「また、湯船にも浸かりたいな……」


「ああ、そうだな、町で聞いて見よう」


静かな夜が更けていく。





翌朝、惣一郎のベッドで目を覚ますスワロ。


起きた惣一郎も下着姿のスワロに驚く。


「またか!」


「おはよう惣一郎殿、どうやら寝てる間に転移した様だな」


「そんな離れて無いだろ!」


小悪魔の様な笑みを浮かべるスワロが、着替え始める。


こりゃ時間の問題だな…… っとため息を吐く、惣一郎。








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