十話【奴隷契約を望む!】

スワロは淡々と語り出した。


「何もかもが白い世界で目覚めた私は、姿が見えない者と話をしたのだ……」


一緒だな……


「その[世界]を名乗る女性の声は、私を勇者として異世界に召喚し、蟲に怯える世を救って欲しいと言ってきたのだ」


ホッとした…… 魔王がコッチに存在しなくて。


「私が生きてきたアノ世とコノ世は、似た世界だと言っていたし、死んでもなお、誰かの為に厄災と戦うのであればと喜んで引き受けたのだ」


まぁ、スワロならそうするか……


「気が付いたら森の中でな……」


「待て待て、えっ、それだけ?」


「それだけとは? 困ってる人がいるのだぞ」


「いやいや、そりゃ確かに新たな力をあげなかったとか言ってたが、最低限武器やお金とか、アイテムボックススキルなんかの安心パックは無かったのか!」


「安心パック? いや何も…… 何か貰えたのか?」


鬼だな。


ただ厄災の中にぶち込んだのか……


「だが、森の中で遺跡の様な物があって、そこで杖を手に入れたのだ」


ああ、そう言う演出か。


「だが、杖が木で出来ていて、魔石は同じなのだが、上手く魔力を乗せることが難しくてな、それでも光剣を2本は作れたのだが……」


「木の杖か…… 使い慣れない武器で苦労したんだな……」


「ああ、結局厄災からは逃げ回り、魔力切れの所を運悪く奴隷商に見つかってしまってな……」


結局、スワロの魔力が増えた理由は、俺の食事だけなのだろうか…… ん?


「スワロ、左腕のそれ…… 薄っすら光ってないか?」


「えっ、ホントだ、今まで気付かなかったが」


「あの時のレーテウルだよな?」


「ああ、あれから片時も離さず、これだけは大事に守って来たのだ。奴隷に落ち、杖も全て奪われてもな…… 惣一郎殿は…… いや、済まん気にしないでくれ」


「あ、いやいやあるよ! 腕を失ってからは、ほれ、足に…… 光ってるな…… 薄っすらと……」


何これ?


スワロは、昔3人お揃いで買った御守り[レーテウル]というミサンガに似た物を、惣一郎も大事にしてた事が嬉しそうだった。


「あっ!」


「どうした、スワロ?」


「分かったかも……」


何が?


「惣一郎殿、契約だ、奴隷契約!」


「奴隷契約? 離れられないとか一緒に死ぬっていう?」


「ああ、この世界の奴隷契約は、魂の結び合いだと言う、命が正にそれだ!」


「それが?」


「惣一郎殿の魔力も命も違いはない、このレーテウルを通して、惣一郎殿の魔力を私が知らずに使っているのかも知れないのだ」


「この金属、ミチル鋼か!」


「ああ!」


なるほど…… ポイな。


「そうか…… 惣一郎殿と……」


なんか嬉しそうだが……


「なるほど、その可能性はあるな。でも早々に奴隷契約は解除した方がいい」


「えっ! 何故だ」


「えっ? 何故って奴隷だぞ、スワロとそんな関係じゃなくても」


「いや、私はこのままでいいぞ!」


「いやいや、そりゃベンゾウとの事もあるし、変な扱いはしないけど」


「では良いではないか! 惣一郎殿と繋がれば魔力の心配も無いし、見ただろあの光剣を! きっと役に立って見せる」


「いや、理由は他にあるんだ」


「ない!」


えっ! あるって言ったの俺だけど……




「最初から落ち着いたら契約は解除しようと決めてたんだ…… スワロ、俺が死んだらお前も死ぬんだぞ?」


「ああ、どうせ生きる意味がない!」


えっ! なにその硬い意志。


「ま、まぁ、問題は距離を離れられない方だ」


「ああ、離れんぞ!」


「スワロも体感したろ、俺には瞬間移動出来る魔法、テレポがある。それに、前みたいに転移トラップで離れ離れになったらどうする。死ぬんだぞ!」


「惣一郎殿……」


「分かってくれたか?」


「惣一郎殿、別に離れても死なんぞ……」


あれ?






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