九話【光剣の大魔導士スワロ】

テントで黙々とアルミ削る惣一郎。


「惣一郎殿…… さっきのアレは、魔王だから出来る事なのか?」


「はい? いや全然関係ないぞ。魔王じゃないし」


「だが、腕が…… 青い腕が生えていたではないか、アレが本体なのか?」


なんじゃソレ……


惣一郎はスワロに幻腕を出して見せる。


「コレは魔力だよ。スワロの光剣と同じ。理屈は分からんが腕を失った後、まだ腕がある気がして使ってたら出せる様になったんだ」


青く燃え上がる様な腕に目を奪われるスワロ。


「魔力… なのか……… 凄い」


「ああ、さっきの厄災だって、前に倒した半分のサイズだったしな」



落ち着きを取り戻すスワロに、質問攻めにあう惣一郎。


いつの間にか外は暗くなり始めていた。



「やはり普通ではないのだな……」


「えっ普通だが?」


「「…………」」


「「っぷ、フフフ、アハハハ!」」


久しぶりに笑ったふたりは、懐かしい思い出話に花を咲かす。





翌日、朝食を終えると外にスワロを呼び出す惣一郎。


「ちょっと使ってみてくれ、直すところがないか、何か魔法を試して欲しい」


「大魔導士様にお見せすると思うと、恥ずかしいな……」


「茶化すな、聖母スワロ様」


「なんだ聖母って?」


「言ってなかったが、お前今じゃ国で祀りあげられているんだぞ! 死んだ後もそれは盛大に国をあげての葬儀でな」


「まさか、知らないと思って惣一郎殿も人が悪い」


いや、ほんとなんだが……


するとスワロが惣一郎から杖を受け取り、構える。


『凄い…… 以前使っていた杖、呪羅流民よりも、魔力が流れていく』


目を閉じ集中するスワロ。


その頭上に現れた巨大な光剣。


本人は気付いているのだろうか!


6mはあろう光剣が一本、スワロの上に揺れる事もなくピタッっと止まっている……


驚く惣一郎。


目を開くスワロが、目の前約10m先の大木へ向けて、杖を振り下ろす!


いつもの光剣が刺さると思っていたのだろう…… 


だが、巨大な光る剣がクルリと回り、大木を縦に両断する!


ふたりとも驚き、口を開いていた……


光剣は、その刀身2/3を地面に埋めたまま、光の粒となって舞い上がり消えていく……


「なにを、したんだスワロ……」


「いや…… 光剣で……」


杖の性能なのかスワロの魔力か、この世界での効果なのか、しばらく固まるふたりであった。



「まっ、まぁ、杖は問題なさそうだな……」


「どうしてそうなる! 問題あるだろ惣一郎殿! なんなのだあんな大きな光剣、見た事も出した事もないぞ! しかも、魔力が全然減って無いんだが」


「えっ、魔力まで?」


前の呪羅流民よりは長めに作ったが、素材も一緒だし、魔石もそんな特別では……


「スワロ、今の何本も出せる?」


「まさか、そんな……」


頭上に現れた4本の巨大な光剣。


「そそそ惣一郎殿……」


「お、落ち着け、ゆっくり解除しろ!」


光剣は上空で霧散する。


どうなってるんだ……




テントの中、テーブルにお茶を淹れ、向き合うふたり。


「初めから整理しよう」


「あ、ああ……」


「3年前に、この世界に来たんだよな?」


「ああ……」


「詳しく教えてくれ」


「わ、分かった……」








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る