八話【魔王健在】

翌日、まずはスワロの服や装備だな!っと起きて直ぐに張り切る惣一郎。


朝食を並べながら、旅の準備も考える。


杖も作らないとだし…… サーチ!


……やっぱいないな〜


「スワロ、この辺りは厄災いないのか?」


すっかり食欲が戻ったスワロが、食べながら答える。


「んっゴックン、ああ、荒野では厄災も食べ物が少ないらしく、滅多に現れない。北に6日程行くと森林が広がっているから、そこまで行けば数も増えてくるそうだが、この大陸自体そこまで多くは無いそうだ」


「へぇ〜 詳しいな! 助かるよ」


「いや長い事、牢に居たからな、他の奴隷から話は……」


「長い事?」


「ああ、奴隷商に捕まって2年はあの町に」


はい?


「えっ、だってスワロが聖騎士にやられたのって、そんな前の話じゃ……」


「いや、私がこの世界に来てもう3年近いぞ」


送られた時間にズレがあったのだろうか?


「苦労したんだな……」




惣一郎は手持ちの金貨も少ない事から、ネットで買える、この世界でも目立たない程度の服を探す。


紫の大人な下着セットと、スリットの入った、厚手の生地の黒いワンピース、それとフードの付いたローブの様な白いロングコートをスワロに渡す。


もちろん、防刃インナーやブーツ、アームガードに脛当ても。


スワロは目を輝かせて箸を止め、ボロ服を脱ぎ出す。


ちょ前にも見たが…… 恥じらい… が……


スワロの身体は痩せ細っていた。


「惣一郎殿、すまぬが下着が大きいんだが……」


「あ、あぁ、今別のを……」


まず、ゆっくりと体力を回復させてからだな。






惣一郎達は、6日かかる距離を13日かけて、のんびり厄災のいる森林へと進んでいた。


この世界に来たばかりでも、衣食住に困らない惣一郎ならではである。


スワロも地球産の食事に見る見る体力を取り戻し、森林に着く頃には良く知るスワロに戻っていた。


惣一郎達はテントを出る。




「あの…… 惣一郎殿、疑う訳じゃないんだが、本当に大丈夫なのか?」


「ん? ああ、大丈夫だろ」


テントから出る惣一郎が新しい理喪棍を持ち、反応があった近くの厄災を倒しに、まるでちょっと用足しにでも出掛ける様に向かう。


取り敢えずと惣一郎から借りた、サバイバルナイフを両手で持ち、心配そうに惣一郎の後を付いて行くスワロ。


森の中を少し進むと、サーチで反応があった通り、目の前に大きなカマキリが他の厄災だった物を夢中で食べていた。


「カマキリか〜 薬の効き悪いんだよなぁ〜」


そう愚痴りながらも足を止めず、進む惣一郎。


『惣一郎殿の薬が効かない!』


スワロはさらに不安になるも、カマキリの足元まで歩いて行ってしまう惣一郎を、見送る事しか出来ないでいた。


カマキリは惣一郎に気付くも、食事をやめない。


惣一郎はそのカマキリの細い脚を、急に現れた幻腕で掴み、投げ飛ばそうと振り返り肩に担ぐ!


ビタン!っと、地面に叩きつけられた脚が一本。


カマキリは姿勢を崩すも、残された脚で踏ん張り耐えると、脚は根元から千切れ、地面に放り投げられていた。


流石に食べていた物を手放し、怒りに鎌を広げるカマキリ!


そこに金属の槍が空から降り注ぎ、カマキリを地面に縫い付けると、無数の鉄球が何度も何度も、地面に押しつぶしていく。


体制を立て直す事も出来ず、入れ替わり鉄球が浮いては落ちるを交互に繰り返していく。


ハリガネムシも居たのか定かでは無いが、腹部に刺さったあの何本もの槍では、出るに出ても来れず潰されているだろう……


そこに横たわる潰れた物は、唯一鎌だけが何蟲だったかを物語っていた。


「魔石、魔石っと……」


スワロはコレはやはり、自分が望んだ夢で間違い無いと、現実逃避していた。


「あった、あった」


惣一郎が魔石を拾い上げクリーンをかけると、薄ら笑みを浮かべ遠くを見るスワロに気付く。


「えっ、どうしたスワロ!」






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